──瀬戸さん自身の理想の育休ライフは?

瀬戸康史 撮影:源賀津己

瀬戸 妊娠する女性の方が自由に動けない時間がどうしても多いので、男性ができることは動いてやるべき。率先してやれることは全部やりたい気持ちではいます。あくまでも理想なので、現実はどうなるか分かりませんけど……。

ただ、僕の親父もそうだったみたいで。福岡の人間ですが、ザ・九州男児みたいな親父ではなく、家事を積極的にやる人なんです。母親が外出しているときは食事を作ってくれたりもしました。なので、僕の中ではそれが普通です。

──育休に大切な心構えは何だと思いますか?

瀬戸 思いやりは言わずもがなで、あとは自分を見失わないこと。どんどん余裕がなくなるから、悪循環に陥らないよう無理なことはしない。誰かに助けを求めることも大事だと思います。

自分の思いどおりに事が進まなかったり、当たり前のようにやっていたルーティーンができなくなったりするのって結構なストレスだとは思うんですよね。いずれにせよ、ひとりではとても抱えきれないと思いますから。パートナーや家族、友達など、支えてくれる人の存在というのが大事になってくるんだろうなと思いました。

この役を演じることにより、そういった心構えを知ることができたことも、僕にとってはとてもいい経験になりました。

思うようにいかないときは、立ち止まるのではなく別の方法を探る 

瀬戸康史 撮影:源賀津己

──育児シーン以外に、撮影で大変だったことはありますか?

瀬戸 台詞量も多いですし、カメラ目線で視聴者に話しかける特殊なシーンもあって。登場人物たちと普通に話していると思った次の瞬間、ふっとカメラの方を見て話し出す。その切り替えが難しかったんですが、楽しくもありました。

そういったシーンの演出では、僕が10年ほど出演している『グレーテルのかまど』を山口(淳太)監督が参考にしてくださったそうなんです。ただ、視聴者に投げかけるのは一緒でも、『グレーテルのかまど』はヘンゼル役ではありますが、ほぼ素ですから(笑)。役を演じながら視聴者に話しかけることに、最初はちょっとだけ手こずりました。

瀬戸康史 撮影:源賀津己

──物語の中では、仕事を一時停止する際の不安も語られています。何かが起き、周りが変わらず進む中で自分だけ立ち止まるときの不安は誰にでもあるものかと。

瀬戸 僕の場合は部下も同僚もいないので中々想像しにくいんですが、魚返みたいな会社員の方々は特にそうですよね。気にせずに……とは言っても気になるとは思いますが、あまり周りを気にしすぎたり、比べたりしなくても良いのではないかなと思います。

──部下や同僚はいないとはいえ、瀬戸さんの場合は同世代や年下の同業者がいますよね。

瀬戸 そうですね。ただ、僕は人と自分をあまり比べたりはしないので。売れる売れない、仕事のあるなしも、各人の人生であり、各人のタイミング。どうしようもないことなので、気にしても仕方がないと思うんです。

若い頃は同時期にデビューした人と自分を比べることもありましたが、それで焦って負のループに陥るのも意味がないので、わりとすぐにやめました。

諦めとはまた違うんですけど、そんなことを考える時間があるなら別のことを考えた方がいいと思うようになって。思うようにいかないときは、そこで立ち止まっていても仕方がない。別の方法を探ることに頭を働かせた方が有意義だと思います。