東山奈央『初恋』(『月がきれい』挿入歌)

中学生男女の初恋を描く『月がきれい』は、今年の春に放映されたオリジナルテレビアニメ。

思春期の男女を描く繊細なシナリオに加えて、比較的リアルなタッチで描かれたキャラクターデザインや、プレスコによる芝居なども今作に独自の色合いを加えており、今年放映されたアニメ作品の中でも強い個性を放つ作品となりました。

主題歌は、オープニング曲、エンディング曲共に、声優の東山奈央さんが担当されており、更に、挿入歌としても様々なアーティストの楽曲をカバーしています。

劇中では、「レミオロメン」の『3月9日』や「Every Little Thing」の『fragile』、「kiroro」の『未来へ』といったナンバーが取り上げられており、東山さんの美声によって、また新たな息吹が吹き込まれているのですが、中でもオススメの曲が、故・村下孝蔵さんの代表曲『初恋』のカバーです。

オリジナルよりもゆったりとしたテンポで、ギターとストリングス、そしてピアノの伴奏でシットリと聴かせるアレンジが秀逸で、東山さんの歌の上手さと声の透明感を存分に味わうことができます。

タイトルや歌詞の内容も、『月がきれい』の世界観にピッタリで、こちらも選曲の巧みさが光る名カバーです。

見月そはら(美名)『岬めぐり』(『そらのおとしもの』ED主題歌)

カバー曲が作中で印象的なアニメ作品といえば、こちらも決して忘れてはいけません。『そらのおとしもの』は、水無月すう先生の同名漫画をアニメ化した作品。テレビシリーズは2期に渡って、更に、劇場映画が2作品制作され、様々なメディアミックス展開も行われた作品です。

テンション高めで、お色気成分高めなギャグの数々と共に、その作品性を際立たせていたのが、テレビアニメ版でエピソード毎に変わるエンディング曲。主演声優が昭和歌謡の名曲の数々をカバーし、その個性豊かな歌声を楽しむことができました。

本作には、主役のイカロス役を演じた早見沙織さんを筆頭に、高垣彩陽さんや野水伊織さん、藤田咲さんなど歌唱力の高い女性声優陣が揃っている為、どの曲も聴き応えは十分。保志総一朗さんと鈴木達央さんの男性ヴォーカルも良い味を出しています。

また、特筆すべきがそのセレクションで、昭和歌謡の中でもちょっとマニアックな楽曲な意外性のあるナンバーが選ばれているのが特徴です。カンフー映画『少林寺木人拳』の主題歌や女子プロレスタッグ「ビューティー・ペア」の『かけめぐる青春』なんて渋いナンバーをアニメ作品のエンディング曲でカバーするセンスは、本作ならでは。

良い意味でマニアックなセンスが光る本作からは、オススメ曲として「山本コウタローとウィークエンド」の『岬めぐり』のカバーを挙げさせていただきます。『そらのおとしもの』でピックアップされた楽曲の中では、メジャーどころな楽曲ではありますが、改めて、そのメロディの良さを味わえる歌と演奏が気持ちの良い1曲です。

成瀬こずえ(花澤香菜)『アジアの純真』(『世紀末オカルト学院』挿入歌)

アニメ作品で昭和歌謡のカバーを大々的にフィーチャーした『夏のあらし!』や『そらのおとしもの』に対して、平成のJ-POPを作品内に取り入れたのが、『世紀末オカルト学院』です。

テレビ東京とアニプレックスのタッグによって展開されたオリジナルアニメのプロジェクト「アニメノチカラ」の最終作として2010年に放映された作品で、"オカルト"をメインモチーフに据えた独特の作品性でファンの注目を集めました。

本作の予告編では、劇中で大きな鍵を握る"世紀末"というキーワードにフォーカスし、90年代末に流行したJ-POPのヒットナンバーがカバー曲として使用されており、作品の雰囲気作りに一役買っています。

「モーニング娘。」の『LOVEマシーン』や「T.M.Revolution」の『HOT LIMIT』、「SPEED」の『White Love』など、青春時代に90年代の音楽を通過してきた30オーバーのアニメファンには、「あの曲も、もう懐メロとしてカバーされる時代なのか……」と思わず感慨にふけってしまうような衝撃があったものです。

編曲は、全曲をElements Gardenが担当しており、原曲もアッパーでハイテンポ、かつデジタルなサウンドの曲が多い為か、アレンジも極々自然体で馴染んでいます。

主演声優の一人である花澤香菜さんがキャラクター名義で歌う「PUFFY」の『アジアの純真』のカバーは中でも白眉の出来で、演じるキャラに寄せた花澤さんの甘くてちょっとエキセントリックな歌声と井上陽水奥田民生謹製の歌メロが非常に完成度の高い形で結合し、ポップソングとして大きな魅力を有しています。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。