撮影:源 賀津己
インフルエンザが猛威を振るっているこの冬、注目したい商品が「ウィルスブロッカー」。首からぶらさげるだけで、1立方メートルの範囲を除菌・消臭してくれるという。開発者はなんと72歳で苦節20年!執着と執念の持久戦で生まれたこの商品の開発秘話に迫ります。

首に吊り下げれば、すぐに使えるという「手軽さ」を大事にした

一時的に効果を出すためには、製品を振るといいそうである。 Amazonで購入

ストラップに入っているこの製品を、首からぶらさげるだけで、1立方メートルの範囲を除菌・消臭してくれる。しかも、効果は約1ヵ月も続き、価格は1000円にも満たない。そしてこの冬も猛威をふるったインフルエンザ対策になるとあっては、お守りのように身につけておくに越したことはない。電車、職場、病院、映画館など、人がたくさん集まり、ウイルスを避けられない場所に行かざるを得ない場面も多いのだから。
……と思う消費者が多かったからか、本製品「ウイルス ブロッカー」は'11年の9月に販売がはじまってすぐに、1ヵ月で10万個ものペースで売れ続け、'12年2月も「おそらく20万個ほどの売れ行き。注文はいただいているけど、売り切れで納品できていないぶんを合わせたら2月だけで30万個ほど」(開発者・和氣清弘さん)というぐらいに売れている。この製は、'11年12月には総務省などが後援した第25回東京ビジネスサミット大賞を受賞した。200社以上の中堅・中小企業による商品で競われ、ほかにも家庭用太陽光発電のための製品、寝たきりに近い状態でも、ベッドでひとりで起き上がれるよう補助をしてくれるロボットなど、時代のニーズに即したものばかりの中での大賞だったのだから、この1年ほどを代表するアイデア製品、ヒット商品とも言えるだろう。

しかも、それだけ売れて話題にもなった商品にもかかわらず、製造元会社である「エンブロイ」は'12年1月まで従業員数がわずか11名、いまも20数名という規模だから驚かされる。製造工程もほんとうに手工業的なのだ。

開発者の和氣清弘さんによれば、この手作り感こそがヒットの要因のひとつだそうだ。
「なぜ、手作りであることが重要か? '11年9月から販売したストラップ型の製品には、陸前高田など、東日本大震災の被災地における雇用を創出する事業との意味もあったからです。もともと'10年から販売をはじめていた、社員証やネームカードに入れられるタイプの『ウイルス ブロッカー』を、買ったら封を開けて首につりさげればすぐ使えるというようにしたわけです。より使いやすく、便利になったことに加え、しかも病気を防ぐ意味でも雇用創出の意味でも被災地を支援する側面があって多くの人に伝わり、ありがたいことに受け入れられたのでしょう」