撮影:山口真由子

2019年に乃木坂46を卒業後、舞台を中心に俳優として活動している桜井玲香が、初主演を飾った映画『シノノメ色の週末』が11月5日より公開となる。

主な登場人物は桜井演じる読者モデルの美玲と、広告代理店に勤めるまりりん(岡崎紗絵)、教育関係の会社で事務をしているアンディ(三戸なつめ)の3人。

同じ女子高の放送クラブだった3人は、卒業してから10年が経ち、廃校が決まった母校で再会する。一瞬、3人はあの頃に戻ったような感覚に陥るも、それぞれに夢みていたものとは違う現実と戦っていて……。

桜井が「この映画には見て見ぬふりをしているものが、痛いほどちゃんと描かれている」と言うように、30代を目前に控えた女性たちの心の機微が繊細に表現されている。

確かに以前と比べれば環境は良くなってきているものの、女性が仕事を続けるためには、どこかのタイミングで決意が必要だし、出産というタイムリミットのあるものに対して、どう向き合うかも考えなくてはいけない、など……20代後半の女性たちは、これから何十年と続いていくであろう人生の選択を迫られるような想いと向き合う。

本作で主演を務めた現在27歳、まさに悩める時期に突入している桜井と、その時期を乗り越え、30代で映画監督になることを決意し、今まさに新鋭として注目される穐山茉由(あきやま・まゆ)監督に、この作品を通して描かれる30代を目前に控えた女性たちへの想いなどを聞いた。

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30代を目前に控えた女性たちのリアルな葛藤を描く

©2021映画「シノノメ⾊の週末」製作委員会

――本作の主人公たちは30代を目前に控えた女性です。監督はなぜこの世代の物語を描こうと思ったのでしょうか?

穐山:私自身、20代後半に人生の大きな壁に当たった経験があるのですが、それは多かれ少なかれ誰しもあるものなのかな、と。

ある程度仕事も落ち着いてきて、その先を目指すのか、とか。周りの人たちと比べて自分はどうなのか、とか。それこそ、結婚はどうしよう?とか。そういう悩みがリアルに目の前にドンっと来る世代だな、という実感があったので、そういう人たちの揺れ動く気持ちを描いてみたいな、と思いました。

それから、学校が舞台なのですが、私が学校を描くなら主人公はティーンではないな、というのもあってこのテーマにしました。

――その主人公を桜井さんにお願いしたのはなぜですか?

穐山:桜井さんが女子校のご出身ということは知っていて、美玲の女子校の中での憧れの存在というイメージがすごくハマるな、と思ってお願いしました。ただ、ご本人は「そんなことない」って言うんですけど(笑)。

撮影:山口真由子

――桜井さんは本作のオファーを受けたとき、どんな想いがありましたか?

桜井:最初「えっ? モデルの役?」とはちょっと思いました(笑)。

――モデルのお仕事もされていますよね(笑)。

桜井:そうなんですけどね(笑)。それから、女の子同士の青春を描いていて、何か大きな事件が起こるとかではなく、その関係性とか、会話で見せていく繊細な物語だな、と思ったので、その表現が難しそうだな、と感じました。

なにより、大切に演じないと表現できないようなものがたくさん散りばめられていたので、頑張らなきゃ、と思いました。

これまで私はわりと舞台を中心に活動していたので、映像のお芝居とは真逆にあるような表現を求められることが多かったです。特に穐山さんの作品は、雰囲気的にも柔らかくて、日常をナチュラルに表現する、という印象もあったので、そこは難しかったですがすごく勉強になりました。

ただ現場は優しい方ばかりで、みんなで一緒に作って行こう、みたいな空気感もあって、私も気負うことなくできました。

撮影:山口真由子

――監督はそんな桜井さんをどう見ていらっしゃいましたか?

穐山:最初に桜井さんとは、今おっしゃっていたようなことも含めて、いろいろ話し合いもしていたんですけど、実際に3人(桜井、岡崎、三戸)が集まって、学校でのシーンとかを撮ってみると、そこで生まれてくる空気感もあって、桜井さんがどんどん美玲になっていって。その過程を目の当たりにしていました。

一人でのシーンでも、ここに欲しい、というような大事なシーンにちゃんとピークを持ってきてくれて。こちらが求めてる以上のものを出してくれることもありました。