ヤマトヌマエビは、コケ対策の生物として有名。その食欲によって、どんどんコケを食べてくれる。このエビは、天野氏がコケ取り生体として有用であると海外に普及させたことでも知られている。そのため海外では「アマノシュリンプ」と呼ばれることもある。彼らが頑張ってくれることで、アクアリウム内のキレイ」が保たれるのだ。

自然の中にある情景にしても、アクアリウムとして人が創り上げた情景にしても、その大きな図を構成するのは、生物や草木、石に砂粒といった小さな小さな存在なのだ。アクアリウムを注意深く覗いてみると、その小さな構成員たちに気が付くことができる。

こうした生き物や環境による絶妙なバランスにより、ネイチャーアクアリウムは創り上げられる。このバランス感覚こそ、天野氏が追求したものであっただろう。写真家として世界中の自然に間近に触れてきた氏は、同時に人間による自然環境の破壊も強く感じていたという。

進んでいくと壁一面を活かしたアクアリウムが登場した。アクアリウムの中から壁まで樹や草といった植物で繋がっており、光を照射する上部からは同時にミストが噴き出している。

このミストシャワーは水槽のろ過した水を気化させたもので、壁の木々に供給されている。設置には高さが必要なため、準備場所の天井を改造してまで作ったという特別な水槽である。

天野氏を語る上で欠かせない、リスボン海洋水族館におけるネイチャーアクアリウム水槽「水中の森」についても紹介されていた。2015年に完成した、全長40メートルという世界最大規模のものである。

大量の石、流木を使い、水族館の中に自然の川を表現させたものだ。天野氏が指揮をとり、総勢60名ものスタッフにより創り上げられた。使われた流木なども、全て日本から持って行ったものだという。

巨大な水槽の模様を大型のスクリーンで体験できるほか、リスボン海洋水族館の展示会場で流されているオリジナル曲も流れていた。

超巨大なものから、小さなものまで、ネイチャーアクアリウムの姿は様々だ。しかし、どのアクアリウム内にも確かに生態系が存在し、小さなものたちの力によって大きな空間が確立されている。

これまでにないネイチャーアクアリウム展示

アクアリウムの世界は、主に男性に人気の趣味かと思っていたが、会場には女性やファミリーでもいた。天野氏が表現した美しい世界に魅了される若い女性も多いのだという。

会場では写真や動画撮影も可能である。今回の展示は、天野氏が新潟に設立した株式会社アクアデザインアマノの協力によって実現した企画。そのアクアデザインアマノには、ネイチャーアクアリウム・ギャラリーが置かれており、ADA作品を鑑賞できるが、撮影などはNGなので、今回の展示は貴重な機会と言えるだろう。

この水槽展示を実現させるには、すでに新潟で展示されていたアクアリウム作品を水を抜いて平行移動させてくるという多大な労力を必要としている。水槽管理にも専門スタッフが当たっており、万全の体制で来場者を迎えている。

ぜひこの場所に足を運び、天野尚氏の自然観を、圧倒的な美しさとともに感じてみて欲しい。ひょっとしたら、アクアリウムを自宅で作ってみたい、とあなたにも思わせてくれるかもしれない。

【天野尚 NATURE AQUARIUM展】

<開催日時>
2017年11月8日(水)~2018年1月14日(日)
平日 12:00~17:00 / 土日祝 10:00~17:00
※開催期間中無休
※年末年始の営業時間については、決まり次第公式ホームページ等にて開示

<料金>
・当日 一般 1,300円 / 大学・高校生 1,100円 / 中学生以下 800円
※未就学児無料

<会場 >
ギャラリー アーモ(Gallery AaMo)
東京都文京区後楽1丁目3番地61

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