結果的には、あまり意識はせずに舞台に立てています。
帝国劇場に入って、リハーサルで舞台の上から客席を見渡して、客席の最後列のお客さままで、確実に思いを届けようと思ったら、声の出し方やボリュームは、確実に変わりました。
でも、演出の松任谷正隆さんは、芝居や空気に「リアリティ」があることをすごく大切にされていて、「動きを大きく」とかは求められていないんです。
だから、帝国劇場という大劇場ではあるけれど、大きな舞台に乗っているという気持ちではなく、今回もナチュラルにお芝居をさせてもらっています。
ーーユーミン×帝劇は、演劇だけでもなく、ミュージカルでもない。どのカテゴリーにも属さない、新しいエンタテインメントの作品に思えます。
そうですね。
ミュージカルと比較するなら、ミュージカルは「悲しさ」「苦しさ」「幸せ」などの感情を台詞で言った後、音楽がかかって、その情景に合った歌を役者さん自身が歌いますよね。
でもユーミン×帝劇は、役者さんの感情を歌い手であるユーミンさんへ「バトンパス」するんです。
お芝居の世界の中にユーミンさんが入り込んで、それを次の世界へ持っていく。ある意味、ユーミンさんも「ストーリーテラー」という役者として一緒に存在している感じがすごくあるんです。
ユーミンさんは舞台裏でずっと、イヤーモニターを使って、目で見るのではなくて、私たちのお芝居の間(ま)や声を、耳で聞きながら、お芝居の感情を自分に移し込んでいるんです。
そして、お芝居のバトンを受け取って、ユーミンとして舞台に出て、歌でパフォーマンスされているんです。リレーのように、みんなでバトンを渡しながら、トラック1周を1本の線でずっと繋いでいく感じです。
「前の人からバトンを受けて、次の人に渡す」。それは、これまでのお芝居でも意識していました。でも今回は、「バトンパス」を今まで以上にしっかりと意識しながら芝居しています。
自分が芝居したものを、歌い手さんに「バトンパス」する経験は、これから先、たぶんもう一生できないことだと思うし、ましてや、パスする相手があのユーミンさんだなんて!!
もう二度とは味わえないことなんだろうな。。
ーー「ミラチャイ」スタッフも観劇しましたが、ユーミンさんの歌とお芝居とが同じ空間で進行していて、いろんな部分に注目したくなりました。
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