ユーミンさんは本当におちゃめで、もの知りな方なんです。人に対しての観察力というか、「この人はどんな人なのか」を察知するのがすごく早い方だと思います。
だから舞台でも、役者から芝居のバトンを受けて、自分の中に吸収して、歌い手としてバトンを届けるスピードも、ものすごく早いんだと思います。
また、ユーミンさんからは、「こんなに褒めていただけるなんて」と思うくらい、温かい言葉ばかりをいただいています。すごく嬉しいことしか言われていなくて。
印象に残っていることといえば、初日から数日後にユーミンさんから言われたことがあって。それによって、私自身の意識が変わったということがありました。
その日、幕が開く5分前くらい、ちょうど円陣を組んでいたとき、ユーミンさんに、
「昨日の最後のシーン、ちょっと弱かったよね」
という内容のことを言われたんです。ほかの人がそう言われたら落ち込んじゃうような内容で。寺さん(寺脇康文さん)も、「俺があんなこと言われたら、本当にもう、落ち込んじゃうよ」と言っていて。
でも私としては落ち込むというより、自分では「ああ、昨日はダメだったんだ。自分ではダメだと思っていなかったんだけどな。そっか…、じゃあ今日はもっとがんばっちゃおう」って思ったんです。
冒頭部分、私は地下でひとりでスタンバイしているんですが、ユーミンさんの言葉をバネにして、「よし、昨日は100点だったから、今日は120点にしよう! 」と思いながら、その日の舞台に出ました。
結果、「ああ、今日はがんばり過ぎちゃったかな? ちゃんとかみ合っていなかったかも」と思っていたら、あとで寺さんに言われたんです。「佐江ちゃん! めちゃくちゃいいじゃん!! 」って。
「もし、俺が本番前に言われたらヘコんじゃうし、佐江ちゃんもきっとめっちゃヘコんじゃってると思ってたから、なぐさめに行こうと思ってたんだよ」とも言われて。もちろんユーミンさんにもすごく褒めていただけました。
自分では「空回りしてるかな」と思っていたんですが、自分でやって感じるものと、人が感じているものって全然違うんだなって思いました。
例えば、鏡で見る自分の顔と、人が見る自分の顔は違うという感覚に似ているというか。自分では「どうなのかな? 」って自信がないときに限って、人から褒められたり、「うまくできた」と思っていたら、実はよく思われていなかったり。
この他者と自分の感覚って、自分ではまだよく分かっていないんですが…。
ユーミンさんに言われたあの一瞬で、私自身の意識も変わりました。
しっかり意識して芝居をさせてもらえた分、ユーミンさんもバトンパスがしっかりできた瞬間を感じて下さったみたいなんです。それがすごく嬉しかったです。
ーーバトンパスを受けるユーミンさんが、ちゃんと言ってくれることがありがたいですよね。
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