「やばいで、オレ。誰でも必ず財布が拾える方法見つけてもうた」

『大富豪アニキの教え』
兄貴(丸尾孝俊) (著)
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ほぼ無一文から世界的な超富豪へと登りつめた『アニキ』は、今日もピアニッシモ片手にニッと笑ってそんなことを言った。

「ちょっと待ってくださいアニキ。誰でも必ず財布が拾えるって…。財布が落ちているのは偶然ですよね? 財布を拾うなんて、たまたま以外にありえないんじゃないですか?」

「それがちゃうねんな。オレはこの世に起こることに偶然なんて一個もないと思ってんねん。『引き寄せの法則』ってあるやろ? 財布を拾いたいっちゅう意志さえあれば、どんどんその人の元に財布は集まってくるもんなんやで」

「でもアニキ、財布を拾ってもお金持ちにはなりませんよね? 拾った財布はちゃんと交番に届けないと…」

「シッ!!」

アニキは険しい表情で人差し指を口元にあて、僕の言葉をさえぎった。その眼光はギラギラしていて、何かに怯えているようにも見えた。僕は見てはいけないものを見てしまったような気がして、アニキから目を逸らした。しかしアニキはすぐに表情を崩すと、「まぁ~こまかいことはええやん! とりあえず財布拾ってから考えよ! 今日はお前に財布の拾い方、バチコ~ン教えたるで!」と不自然なぐらいの明るさで、僕を街に誘ったのだった。

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