TVアニメ「サクラクエスト」CD-BOX『SAKURA QUEST "BEST"』

『花咲くいろは』と『SHIROBAKO』というヒット作に続いて、P.A.WORKSが送り出した「お仕事シリーズ」最新作『サクラクエスト』のサントラには、多様な音楽の楽しさがギュッと詰まっています。

ふとしたきっかけで寂れた田舎町の観光大使を務めることになった主人公が、仲間たちと力を合わせて町興しに挑み、その中で成長していく青春ドラマを描いた本作。

その劇伴を担当したのが、ボーカリスト、コンポーザー、そして、イラストレーターという様々なクリエイターによって結成されたスペシャルユニット「(K)NoW_NAME」です。同ユニットは、主題歌・劇中歌・劇伴と、本作の音楽面を全面的にバックアップしています。

(K)NoW_NAMEにとって、実質的なデビュー作となった昨年の『灰と幻想のグリムガル』と同様に、サウンドトラック盤も、歌モノとインスト曲をフルパッケージした「ベスト盤」という形態でリリースされており、CD4枚組の大作に。

勿論、どの曲のクオリティも高い水準で制作されており、非常に聴き応えのある作品となっています。

劇中で使用されたインスト曲に絞ってみても、金管楽器が鳴り響くジャジーな楽曲あり、スライド・ギターが印象的なブルージーなナンバーあり、シンセポップのような打ち込み曲があり……と、バラエティーに富んだ音楽ジャンルを取り込んだ個性豊かな楽曲が揃っています。

各種の音楽を旺盛に盛り込んだメロディとミクスチャー的な音作りは、このユニットならではの強みといえるでしょう。また、使用されている楽器もその豊潤な音楽性に比例して、バンドセットに、ホーンセクション、ピアノ、ストリングス、電子楽器など多岐に渡っており、それぞれの音色と響きを追うだけでも楽しむことができます。

アニメ本編の作風に合わせてか、どこかコミカルで明るいニュアンスを感じられるトラックが目立つのも本作のチャームポイント。パンクやメタルのエッセンスを取り入れた歌モノナンバーを軸足に、ロックなイメージが強い楽曲の多かった『灰と幻想のグリムガル』と聴き比べてみるのも一興です。

THE REFLECTION WAVE ONE - Original Sound Track

2017年のアニメサントラのベストといえば、英国の大物音楽ミュージシャン、トレヴァー・ホーンが参加した『THE REFLECTION』の劇伴を挙げないわけにはいきません。

アーティストとして、また、プロデューサーとして、テクノポップやニューウェーヴの世界で数多くの大ヒット曲を生み出してきたトレヴァー・ホーンが、まさかのアニメサントラを制作ということで、アニメファンのみならず音楽ファンからの話題を集めた『THE REFLECTION』。

サントラ盤のジャケットも、アニメタッチに描かれたトレヴァー・ホーンの姿が大々的に描かれており、コンポーザーのアーティスト性が全面に押し出されたデザインとなっています。

収録曲の多くは、これまでにトレヴァー・ホーンが生み出してきた実験的でありながら、享楽的でひたすらに抜けの良いポップなテクノ、ニューウェーヴサウンドというよりは、グッとシリアスで荘厳な仕上がりに。

超人的な力を持つヒーローを主役としたアニメ作品の劇伴に相応しく、緊迫感やアクションシーンでの躍動感を演出する為のメロディとリズムは、「サウンドトラック」として非常に高水準かつ実直な作りといえるでしょう。

一方で、80年代のトレヴァー・ホーンのパブリック・イメージがそのまま現代に実像として甦ったかのようなテクノポップ曲の『My Daily Life』、自身が歌唱を担当する『Sky Show』といった明るい曲調の楽曲や歌モノナンバーもシッカリと収録されており、80年代のポップ・ミュージックファンには堪らない目配せもバッチリと行き届いている点は、何とも嬉しい限り。

ボーナストラック的に収録された『Sky Show』のリミックスバージョンと、9nineに提供したエンディング主題歌『SunSunSunrise』の英語詞でのカバーバージョン『Future Boyfriend』も、ただただ「カッコ良い……!」という極々ストレートな賛辞の言葉を送りたくなる出来となっています。

どこか懐かしく、そして、他方でどこか新鮮なサウンドを感じられる……コンポーザーの"らしさ"を存分に感じられるサウンドトラックであり、「トレヴァー・ホーン」と「アニメ」という斬新な組み合わせが生み出した良盤です。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。