荒木監督の「唯一無二な演出」

撮影/友野雄

今回、監督の荒木哲郎を始め、キャラクターデザイン原案の小畑健、脚本の虚淵玄は宮野にとって関わりの深い存在だ。「ターニングポイントになる作品を一緒に作ってきた方々との製作だったので、すごく特別な気持ちを抱いた」という。

そんな宮野から見た荒木監督はどういう監督か聞くと、「監督のデビュー作品から僕はやらせていただいているので。知っているかな。『DEATH NOTE』っていう作品なんですけど」と微笑んだ。荒木監督が初めてシリーズ初監督を務めた『DEATH NOTE』で、宮野は主人公の夜神月役を務めている。

「『DEATH NOTE』という作品はとてもファミリー感があって、監督さんを始め、スタッフさんと密になって作っていく空気感を味わわせてもらって、それはやっぱり特別なひとときでしたね」

そういったあと、「荒木監督は一見寡黙なんだけど、とてもおちゃめな人。アニメーションやエンタメを作っていく上での少年性を持っている。それを映像作品に反映させる上での繊細さも持っているんですよね。」と続けた。

撮影/友野雄

「『DEATH NOTE』のときから、色使いが非常に印象的でしたね。状況によって色使いと心情がリンクしていて。『黒塚 KUROZUKA』でご一緒させていただいたときには温度感を大事にしていると聞いて、なるほどな、思いました。温度感というのは、色合いだけじゃなくて、物語の熱量や、1話の中でのエネルギーの見せ方みたいなものをよく考えていらっしゃって。

それは1話だけじゃなくて、シリーズ構成にも及んでいるんですよね。『DEATH NOTE』や『黒塚 KUROZUKA』はシリアスなお話だけど、ホッとできるようなコミカルな話数も挟まっていて、全体のエンタメ感として見せていく。

本当に素晴らしい作品をたくさん手掛けていらっしゃって、また今回、『バブル』でその色使いや映像から温度感を感じました。やっぱり唯一無二の演出をされる方だな、と。

キャラクターや作品にとことんまで寄り添って、作品を愛している。『DEATH NOTE』で言えば、監督が月の一番の味方になっているんですよね。そんな姿は月を演じる身であった僕としては嬉しかったです。当時から、自分の作品にものすごく大きな愛情を注ぐ方なんだな、と感じていました」

さらに、『バブル』では監督の新たな側面に触れることになったという。

「殺伐とした作品でご一緒することが多かったので、今回、ピュアな、美しい物語を見せていただいたので、新たな発見というか。監督の中はこんなにかわいいんだな、と。ピュアな部分がふんだんに表れている作品なんだな、と思いますね」