オートメイルを実際に作ったスタッフさんたちの原作リスペクトに感動

『鋼の錬金術師』©2017 荒川弘/SQUARE ENIX ©2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会​

――そんな強力なキャラクター「エド」をどの様に演じようと工夫されましたか?

朴:私がエドを演じるときは、荒川先生が生みだしたハガレンという魔物に「みーつけた」と指さされたような感じでした。

「おめーのエネルギーと体を貸せ! まさぐらせろ!」というような強引さ。もう、どうぞと自分を差し出すしかないという感覚でした。

山田:僕は深く考えないことを大事にしていました。もちろん見た目を寄せることや原作やアニメを見直すなど、自分に出来ることは準備をした上で臨んでいます。

でも、現場に立つ人間は僕です。原作のエドでもアニメのエドでもない、山田涼介のエドとして現場には立たなくては、僕が選ばれた意味がなくなってしまうので。

そこにはオリジナリティが必要で、現場で起こること、すべてに対して真摯に向き合って、リアクションするということを大切にしていました。

――エドの先輩である朴さんから見て、山田さんのエドのどんな所に魅力を感じましたか?

朴:アルとの喧嘩のシーンが特にステキですね。現場に、鎧の姿であるアルはいないわけでしょう? 私には、理恵(釘宮理恵さん)がいたもん。

山田くん、改めてよくやったねぇ。

山田:ありがとうございます、頑張りました! アルは身長2m20cmなので、想定して動いていました。あのシーンはオートメイルの右手ではなく素手の左手で殴るというすごく重要な場面。

左手でカッコよく決めるにはどうしたらいいだろう?と、家でひたすらシャドウボクシングをやり、見え方を研究しました。

真夏の撮影だったこともあって、40度超える室内の中でスタッフさんも汗だくで頑張ったシーンです。完成された映像を見てアルがいてすごく満足しました。あのシーンは一番見てほしいです。

――アルフォンスはフルCGですが、エドのオートメイルもCGで作られているのですか?

山田:CGではないところが、一箇所だけあります。そのシーンのためだけに、リアルなオートメイルを作っています。

あのシーン1カットのためだけに作られていて、めちゃくちゃ高いそうです。そういうところにも、原作に対してのリスペクトや愛をスタッフさんから感じますね。

だから僕も、撮影のときはとても大事に扱いました。何せ高いですから!(笑)

荒川先生に「なんて作品を生み出したんだ!」って聞きたいです

『鋼の錬金術師』©2017 荒川弘/SQUARE ENIX ©2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会​

――改めて『鋼の錬金術師』という作品の魅力、持っているパワーについてお聞かせ願えますか?

山田:一番は大人も子供も、みんな楽しめるところだと思います。アクションやバトルシーンなど、少年マンガとして面白くて大事な要素がありつつ、ストーリーは大人向けで。

話が展開していくうちに主軸となるキャラクターも成長して変わっていき、それぞれのバックボーンもしっかり描かれていますよね。

そして、何か弱い部分をぐっと握られるシーンもいっぱいある。観ていて辛い所もありますが、それでも惹かれるのは、人間の本質を描いている作品だからだと僕は思っています。

朴:人が生きていく上でシンプルなことを、ハガレンは伝えてくれます。荒川先生のカッコつけない、むき出しの生きるエネルギーのようなもの、美学が詰まった作品なのではないかなと思います。そこが、人を惹きつける。

私もエドを演じるときは、ものすごくエネルギーが必要でしたし、読んでいる、観ている側もエネルギーを求められますよね。

実は生きることって、疲れるものでもあります。でも、そこから逃げちゃいけない。いまだに私も分からないところですが、人の心をぎゅっと捕まえて、震わせて、抱擁と共に放り投げられるというような、そういうところがハガレンの魅力なのではないかなと思います。

山田:本当に天才ですよね、荒川先生は。

朴:荒川先生に「ハガレンというすごい魔物を産み出しちゃった自覚はおありですか?」って、問いたいくらいにね。