小川真奈『スッピンロック』(『ヒャッコ』OP)
2000年代半ばから後半のアニソンシーンを振り返る際に、重要なトピックの1つとして触れておかなければならないのが、つんくさんやハロー! プロジェクトのアイドルが残した音楽の数々です。
例えば、2007年から放送を開始した『しゅごキャラ!』では、Buono!が、そして、2008年から放映をスタートした『イナズマイレブン』では、Berryz工房がフィーチャリングアーティストのような形で番組に携わり、歴代の主題歌を担当。
また、モーニング娘。を筆頭にハロプロ所属のアイドルが出演した『きらりん☆レボリューション』や、つんくさんが声優として劇中に客演し、更に、主題歌の制作も担当した『極上!!めちゃモテ委員長』など、キッズ作品を中心に、ハロプロやつんくさんプロデュースのアイドルがアニメに深く関わっていたのが、まさにこの頃なのです。
アニメの主題歌や挿入歌にして、アイドルソング。そんな素晴らしい音楽の数々が世に生み出されました。
『スッピンロック』もそうした時期におけるつんくさんの仕事の1つで、小川真奈さん(キャナァーリ倶楽部)のデビューシングルであると同時に、つんくさんも音楽プロデューサーとして制作に参加した深夜アニメ『ヒャッコ』の主題歌として起用されたガールズ・ロックナンバー。
兎にも角にも明快なメロディが命になっている1曲。10年経った今聴いても、まったく古さを感じさせません。2010年以降の"アイドル戦国時代"突入前な当時のアイドルシーンの空気感を感じる上でも、抑えておきたいナンバーです。
『ヒャッコ』は、つんくさんが平野綾さんに提供したエンディング曲の『涙 NAMIDA ナミダ』もこれまた名曲ですよ!
pigstar『君=花』(『純情ロマンチカ』OP)
『純情ロマンチカ』は、ボーイズラブコミック界の人気作家である中村春菊先生の漫画を原作としたアニメ作品。特徴的な演出や台詞回しがアニメのメインターゲットである女性ファンは勿論、一部の男性ファンからも支持され、テレビアニメ版も全3作が制作される人気シリーズに。
ノイタミナ枠で放送された『のだめカンタービレ』シリーズや、東映アニメーションの作品で活躍されている今千秋監督のフォルモグラフィーとしても、アニメファンに知られる作品です。
第1シーズンのオープニング主題歌は、ロックバンドpigstarが歌う『君=花』。ストレートなバンドサウンドが魅力の曲で、ひたむきに真っ直ぐなメロディと歌は、所謂"青春パンク"的な音楽エッセンスを色濃く宿しており、ビートもギターは熱く、そして、ちょっと甘酸っぱい。
愛する人を花に例えて、自身の愛情を描く歌詞世界もロマンティックで、女性のみならず男性も思わずときめいてしまうような、とても良く出来たラブソングです。
本曲が好評を博し、pigstarは同作の第2シーズンのオープニング主題歌も担当。そちらの曲では鍵盤楽器を加えた、これまた素敵な青春ラブソングを聴かせてくれました。
ケメコ(斎藤千和)『プリップリン体操』(『ケメコデラックス!』ED)
2010年代に入ると『侵略! イカ娘』『じょしらく』『ガールズ&パンツァー』、そして、『SHIROBAKO』と大ヒットアニメを次々に世に送り出し、ヒットメーカーとなった水島努監督が2008年に制作した美少女ギャグアニメのエンディング曲。
四つ打ちビートやアッパーなシンセサイザーなど、ダンスソングとしてのツボを抑えた作編曲が施されているものの、それらを全て無に帰す程のトンデモない歌詞が強烈な印象をリスナーに残す電波ソングであり、"全く踊れないダンス・チューン"となっています。
「ジグムント」「ソドムの市」「パゾリーニ」といったおよそアニメソングとしては相応しくない不遜(で、尚且つ、ちょっとアーティスティックな感性を感じさせる言葉のチョイス)なキーワードが並び、挙げ句の果てには、唐突に、某大国の大統領(当時)を揶揄し始める。非常に毒の効いたユーモアが散りばめれた歌詞の存在感は、まさに唯一無二。
この辺りのセンスは、『クレヨンしんちゃん』への参加や、監督作の『よんでますよ、アザゼルさん。』『じょしらく』等のブラックユーモアを含んだコメディも得意とし、また、OVAの「邪道魔法少女シリーズ」で電波曲の作詞を手掛けた水島監督の"リリックメーカー"としての本領発揮といったところでしょうか?
斎藤千和さんの吹っ切れた歌声も「凄い!」としか言い様がない破壊力に満ちています。間違いなく、2008年度ナンバーワンの怪曲です。
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