一気に天下井とは濃い向き合い方ができた

撮影/稲澤朝博

――三山さんは以前からファンだったということで、現場で本物の“楓士雄”を初めて見た時はどう思いましたか。

三山:“楓士雄”と会ったのは、撮影が始まってから少し時間が経っていたんです。なので自分としてはわりと役柄に入り込めたところで、天下井としても「楓士雄ってどんな奴だ?」って思っていたタイミングでもあったので、ようやく会えたような感じはありました。

ただそもそも好きで観ていた作品のキャラクターでもあるので「本当に制服着てるよ~」とかは思いました(笑)。鳳仙のメンバーに会った時も、あの制服を見て「うわ~」ってなりましたし。

©2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会 ©髙橋ヒロシ(秋田書店)HI-AX

――三山さんのクランクインはどの場面だったのですか。

三山:映画の冒頭に出てくる瀬ノ門がとある学校に乗り込で制圧して、校舎から出てくるところです。めちゃめちゃ緊張しました。今までに出演した作品にはない緊張感がありました。

当たり前なんですけどすごい強面の人たちがたくさん居て(笑)、その先頭に「なんで俺がいるんだろう?」って。なかなか腑に落ちなくて、最初は芝居ができなかったです。

しかもこの映画で最初に出る声が、天下井のセリフなんですね。自分の声から物語が始まると思うとさらに緊張してしまいました。

タバコをくわえて優雅にふかしているシーンがあるんですけど、本番ギリギリまで緊張で手が震えてしまって全然吸えなかったり(苦笑)。

ただ、そのタバコはサボテン役の永沼(伊久也)さんからノールックで受け取るから、リハーサルの時に僕から「反対にして渡したりしないでくださいよ」って冗談で言ったんです。そしたら永沼さんも「そんなことやるわけないだろっ」って。でも本番で反対にして渡してきたんです(笑)。

監督から「反対だよ!」って言われて気付けたんですけど、永沼さんも緊張していて。そこでみんなで爆笑して、そのおかげで緊張がほどけてリラックスすることができました。

©2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会 ©髙橋ヒロシ(秋田書店)HI-AX

――川村さんは久しぶりまた楓士雄を演じるために何か準備はしましたか。

川村:普段から体型管理はしていて、基本的にベースはそんなに変わらないんですけど、楓士雄の場合は少しぷくっとしてる方がぽいのかなって思って、そこは少しだけ準備しました。

実際には3年経ってますけど、物語としては前作のすぐ後という時系列だったので、いつもの僕の(身体の)ラインでいくと続きにならないなと思って。結構がっつり食べつつ、トレーニングもしながら作りました。

ただ気持ち的な部分は、特に何かをしなくてもすぐにできるものだったので、そのためにしたことはなかったです。

撮影/稲澤朝博

――天下井は今作のキーパーソンですが、プレッシャーなどはありませんでしたか。

三山:もちろんありました。それに事前に役作りをする時間があまり持てなかったので、撮影をしながら進めていくような部分もありました。監督と話ながら、演じながら天下井と向き合って。そうやって走り抜けた時間でした。

ただ今考えるとそれが良かったんじゃないかと。撮影期間も短かったので、一気に天下井とは濃い向き合い方ができたんです。逆にゆっくり向き合っていたら、あの感じは出せなかったんじゃないかと思っています。

――普段の三山さんと天下井とではかなりキャラクターが違いますよね。

三山:違います!違います! そもそもあんな人、普通にいないじゃないですか。いたら困ります(笑)。

©2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会 ©髙橋ヒロシ(秋田書店)HI-AX

――そんなキャラクターにどう寄り添ったのですか。

三山:演じている時は俯瞰で見えていなかった部分もあったんですけど、撮影を終えて振り返ってみた時に、人間らしいところは忘れずにいようとしていたなと。ああ見えて天下井は意外と寂しがり屋だったりもするし。

さっきも話したように演じながら作っていたので、はっきりと正解がわからないままにやっていたところもあったんですけど、それが天下井として正解になった気もするんです。

須嵜に対する態度も、僕自身も迷っていたけど、天下井も幼なじみでありながら、親同士の関係性もあったり、立ち振る舞いに迷っていた部分もあって。そこが重なって逆にリアルになっていたなとも感じました。