「ここまでもともとの関係性が影響する作品ってあるんだ」って思いました
――今回の役柄は、お二人のもともとの関係性があったからこそできたところもありますか。
永野:間違いなくありました。「ここまでもともとの関係性が影響する作品ってあるんだ」って思いました。
これが初めましてで、そこから距離を縮めなければいけない方だったら、そのことに一生懸命になり過ぎて、シイノとマリコになるまでにすごく時間を要しただろうなと思います。
撮影期間も20日間と短かったので、ここまでシイノとマリコとしてお互いを想い合えたのは、本当に相手が奈緒ちゃんだったからだろうなって思います。
奈緒:私も間違いなくありました。この映画の中でマリコは過去の回想シーンと、シイちゃんの中の幻影としてしか出て来ないんですけど、やっぱり回想シーンって難しいんですよね。その人が生きていた中でのハイライトだけが描かれるので。
でもその時の相手が芽郁ちゃんだったから、私の中に最初から埋めていける気持ちと、勝手に湧いてくる感情があって、作るということをしなくても良かったんです。
芽郁ちゃんがシイノとしてそこに居てくれるだけで、私は作る必要がなかったから、絶対にこの関係性だからこそ描けたものがあるなと思いました。それは撮っている時から実感がありました。
――シイノもマリコも、普段のお二人のイメージとはかなりかけ離れた人物に思えたのですが、そんな中でもお互いを見ていて、「ここは役柄と重なるかも」というようなところはありますか。
永野:マリコか(笑)。
奈緒:難しいよね(笑)。
――確かに二人とも極端なキャラクターですよね。
永野:そうなんですよね。けど人間が誰しも持っている脆さみたいなものは、私にもたぶんあるんでしょうし、マリコのすごく繊細で少し間違えたら全部が崩れ落ちちゃうようなところは奈緒ちゃんと重なる部分もあるというか。
奈緒ちゃんは人に優しさを与えられる人で、だからこそ自分が我慢してしまうところがあるんです。繊細だからこそ人に優しくてお芝居もできるのだと思うんですけど、そこは永野芽郁として「守りたい」って思うし、シイノとしてマリコを「守りたい」と思う気持ちと重なっていたのかなと思います。
奈緒:今、パッと思い出したシーンではあるんですけど、喫茶店でシイちゃんがマリコに対して怒るところがあるんですね。芽郁ちゃんは普段はほわんとした柔らかい空気を持っている方なんですけど、人のために怒れる人だと思うから、今考えると、そこは重なるのかなと思います。
私がもし自分を大事にしていなかったら、芽郁ちゃんはきっとシイちゃんと同じように、「もっと自分のことを大事にして」って、もしかしたら私より先に泣いて怒ってくれるかも知れない。
あの時のシイちゃんの強さには真ん中に優しさがあるんですけど、その芯の部分は芽郁ちゃんと重なる部分がありました。だから私もマリコも「この人の側にいたい」って思うんだろうなって。