一人で戦っているシイちゃんと、芽郁ちゃんがすごくリンクした

撮影/小嶋文子

――撮影中、お互いに「ここは頑張っていたな」とか、「大変そうだな」と感じるようなシーンはありましたか。

永野:もう全部そう思っていましたけど、その中でも印象に残っているシーンをあげると、シイノがマリコのために身体を張る場面ですね。そこにはマリコも居るんですけど、そしたらそのシーンが終わった時、奈緒ちゃんが震えながら、「ちょっと芽郁ちゃんの肩を触ってて良い?」って言っていて。

それで私は奈緒ちゃんの背中をずっとさすっていたんですけど、そこまで入り込んでやらないと、この作品は完走できないっていう想いがお互いの中にあったんだと思います。

そうやって一つひとつのシーンにとても真摯に、頑張って向き合っている奈緒ちゃんの姿を見て、「私も頑張ろう」って思っていました。

奈緒:芽郁ちゃんは精神的にも、そして身体的にも大変なことが多かったと思います。私は自分のシーンがない日に撮影を見に行くことがあったんですけど、自分が出ないから現場を客観的に見ることができたんですね。そんな中で、本当に芽郁ちゃんは大変そうだなと思うことがたくさんありました。

具体的なシーンで言うと、そこはマリコも一緒だったんですけど、居酒屋でシイちゃんがマリコの幻影に向かって怒るところです。

そこには実際のマリコはいないので、芽郁ちゃんは周りからは見えていないマリコに向かってお芝居をするから二人の目が合わないんですね。それでテストの時に芽郁ちゃんが「奈緒ちゃんと目が合わないからすごく辛い」と言っていて。

その一言を聞いた時、シイノは一人で旅をしているので、そのシイノが抱える孤独を芽郁ちゃんも同じように抱えてこの作品を走っているんだなと感じて。一人で戦っているシイちゃんと、芽郁ちゃんがすごくリンクして、改めて芽郁ちゃんの大変さを感じる瞬間でもありました。

©2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

――前回の共演から約4年が経ちましたが、役者として改めてお互いに対して気づいたことはありますか。

永野:もうそんなに経ったのか……。

奈緒:経ったね。

永野:以前もそうでしたけど、さらにもっとそうだったと思ったのが、奈緒ちゃんの人柄が役に反映されているところですね。奈緒ちゃんは繊細ではあるけど強さもあって、優しくて、あたたかい人で、それがマリコにもあって。

今回の役って特殊だし、演じながら自分自身が苦しめられる瞬間も多々あったと思うんです。それでもマリコがただのかわいそうで、悲しい子に見えなかったのは、奈緒ちゃんのもともとの人柄があったからだと思います。

奈緒ちゃんが演じるマリコだったから、私はシイノとしてマリコの側で頑張れると思ったし、突き動かされました。もしマリコを奈緒ちゃんがやってくれていかなったら、私はもっと苦労していたと思います。

お芝居なんだけど、お芝居じゃないって感じる瞬間がすごく多い方なので、私も同じ職業をしていて、シーン一つひとつに立ち向かう奈緒ちゃんの姿を見て、刺激を受けていました。

奈緒:私にとって芽郁ちゃんは最初に会った時からすごくて、その時の記憶が「もう4年も経ったの?」って思うくらい鮮明です。当時も今回も座長としてすごく大きな受け皿になってくれていました。

この繊細で、可愛らしくて、華奢な体の中に、ものすごく大きなお皿を持っていて全部受け止めてくれるんです。だから私たち俳優部は思いっきりそこに飛び込んでいけます。こちらの年齢とか、経験とか関係なく、芽郁ちゃんは飛び込んでも大丈夫な方で、そこは心から尊敬しています。

永野:なんか褒め合ってるのが恥ずかしい(笑)。

奈緒:わかる(笑)。恥ずかしくて顔が見れない。