年齢や性別に関係なく読んでほしい、“無識者”の人生論
──さきほどお話にも出てきましたが、若宮さんによるメッセージ本『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』。どんな本になりましたか?
表紙にも、各章の扉ページにも、私がエクセルで描いた絵(エクセルアート)を使っていただいて、手に取るのが楽しくなるような、ワクワクする本になったと思います。
──本を作るにあたって、いちばん気をつけたところはどこでしょう?
表現方法ですね。私は有識者じゃない人間、すなわち“無識者”ですから(笑)、“上から目線”のような表現にならないように、「ひとつでもふたつでも、読者の方のお心に留まったらいいなあ」という気持ちで作りました。
──「特に、こういう方に読んでいただきたい」というのはありますか?
最初は、50代から60代くらいの方、特に女性を中心に読んでいただくイメージでしたが……いまって、本屋さんでも吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』が売れているでしょ? 80年前に出版された本なのに、いまの時代にすごく求められている。
人生論のジャンルって、20代や30代の若い人たちのニーズも高いし、男性の関心も高いんだなあと感じたので、年齢や性別に関係なく読んでいただけるものにしたいと思いました。
人生はお芝居じゃないんだから、役割を忠実に演じなくたっていい
──激動の2017年を経て、2018年はどんなことにチャレンジしたいですか?
もう一度、1からプログラミングの勉強をしたいですね。寝る時間を確保するのもやっとなくらいに忙しいので、なかなか難しいんですが。
──おそらく“日本でいちばん忙しい82歳”だと思うのですが、それでも数多くのお仕事をこなしていらっしゃる若宮さん。その秘訣はどこにあるのでしょう?
とにかく「すぐやる」ことですね。頼まれたことがあっても、すぐその場でやれば、メモも書かなくて済むでしょ? メモしたって……ねえ? 自分が書いたことなのに、後で見たら何を言っているのかよくわからないことが多くて(笑)。
だから、その場ですぐやっちゃうのが一番いいんです。できるものは、すぐにやる。
──なるほど。では最後に、「人生100年時代」を生きるこれからの世代に向けて、メッセージをいただけますか?
急に「人生100年時代」なんて言われるようになって、戸惑っていらっしゃる方もたくさんおられると思いますが、「人間をやっている」というのは素晴らしいことだと思うんです。
だから、戸惑ってばかりいないで、みんなで楽しく元気に人間やりましょうよ!
これからの時代、主たる仕事は「人間をやる」こと。サラリーマンをやる、公認会計士をやる、学生をやる、お母さんをやる、娘をやる、嫁をやる、おばあさんをやるとか、そういうのはとにかく後回しで、まずはなにより人間をやりましょう!
──役割にとらわれない生き方ですね。
そうなんです。人生はお芝居じゃないんだから、役割を忠実に演じなくたっていいんです。辛いと思ったら、役割を降りたっていい。お子さんたちにも、そういう視点で接していただけると良いかなあと思います。
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多様な生き方や働き方が求められるこれからの時代、若宮さんの「人間をやる」というシンプルな言葉こそがまさに“理想の在り方”ではないでしょうか。
より楽しく、より自由に生きるためには、人生という舞台で役割を演じるのではなく、人生そのものを「人間」として味わい尽くしたい──“82歳のおばあちゃんプログラマー”の大冒険は、まだまだ続きます。