言葉じゃなくても伝わるもの
そんなとき、ムスコが些細な問題でイライラする事が以前に増して目立つようになりました。
ちょっと注意するとギャン泣きされ、嫌なことには全力でエビ反りし、お腹が空いただけで怒り狂う。
「きんちゃん何が嫌なの!?ママに教えて?ちゃんと聞くから!」とワタシが言うと、
「いぎゃあああ~!わぁぁあん!!」とひたすら泣くばかり。
あぁ、こんな時に言葉が通じたら、気持ちを言ってくれたらもう少し楽なのに…何に怒っていて、何が不快なのかを想像だけで当てなきゃならないなんて…
「もういい加減、言ってくれなきゃ分からないよ!赤ちゃんじゃないんだから!」
ハッと気が付くと、大声に『ビクっ!』っとしたムスコが急に泣き止み、睨みつけるワタシの顔からおずおずと目を背けていたのです。
そう、ムスコはちゃんとわかっている。
ワタシが何を言ったのかも、どう思ってるのかもちゃんと全部伝わってる。
なのに自分の気持ちをうまく返せなくて、それで苦しんでいるんだ。
言葉が出ないことにイライラしているのはワタシじゃなくてムスコ本人だ。
「…ごめんねきんちゃん、きんちゃんが一番辛いよね…」
その時からワタシは、他の子と比べて遅いとか早いとか羨ましいとか思うことをやめました。
これ以上ムスコにプレッシャーをかけるのはやめて、ありのままを受け入れようと心から思うことが出来たのです。
言葉で伝えてくれなくても、ムスコは全身をつかって必死に感情表現しているので、まずはそこをキッチリ汲み取ればいい。
返事が無くても伝わってると信じて、ワタシと旦那はきちんと言葉で話しかけ続けよう。
そして、言葉だけにこだわらず、前よりも成長した部分があったらそこを褒めて伸ばしてあげよう。
そんなふうに思えるようになってから、だいぶ肩の力が抜けたような気がします。
その後、保育園でもよくよく観察してみると、お友達と一緒にニコニコしながら走り回ったり、おもちゃの奪い合いでケンカになったり、号泣して別の子に慰められたりと、意外にコミュニケーションできている姿を見つけました。
「なんだ~きんちゃん、仲良くやってるじゃ~ん!」
ホッとして声をかけると、みんながワーっと集まり、
「きんちゃん、ママ来たよ~!」
「きんちゃんバイバーイ!」
「きんちゃーん!」「きんちゃんまたね~!」
と、なんだかエライ好かれっぷりにビックリ。
本人はワタシを見つけると満面の笑みで「わわ~ぁぶぅ~~!!」と叫び駆け寄ってきます。
腕の中でギュ~~っとワタシに抱き着くムスコの体から『ママ大好き』という言葉があふれているように思えました。
ずっとずっとワタシが欲しかった言葉をこの子は伝え続けてくれていたんだな。
そう感じることで、明日も頑張れる気がしました。
つづく
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