交易の歴史をたどる「貝の道」
貝は世界中でとれる素材ですが、実はビーズの素材になりうるものは多くないとのこと。
タカラガイは世界中に広がっている貝で、「貝の道」と呼ばれる海岸部から内陸部までの道もあり、内陸部に運ばれることで価値が付加されます。
第一展示室でも特に目を引くパプアニューギニアの神像には、タカラガイをはじめとする6種類の貝が使用されています。
エチオピア製の子どもを背負うための皮製袋と、インドで作られた戦闘用の装束にも、タカラガイが使用されています。
同じ種類の貝が、はるか遠い地で異なる目的で使用されているのは、なんとも興味深いですね。
完成までに2カ月。インパクト大なビーズ人像
興味深いといえば、世界最大級のビーズ工芸品ナイジェリア・ヨルバのビーズ人像。青と緑を基調とした色使いに約1.5メートルという大きさも相まって、会場内で存在感を放っています。
ナイジェリア国内の王様や首長からの依頼を受けて作成することが多いそうですが、近年では観光客や博物館からの求めに応じることもあるとか。
ビーズをたどって世界一周旅行へ!
第二会場では、世界を10エリアに分類し、各地のビーズ工芸品を紹介。
同展覧会の会場である渋谷区立松濤美術館は、暮らしとファッション、暮らしとアートなどをテーマにした展覧会を数多く手掛けてきたこともあり、第一会場と雰囲気がガラリと変わります。
南スーダンのディンカの男性が富の象徴として身につけるコルセットは、豊かであるほどコルセットの背中部分が高くなるそう。
ちなみに、クリスチャン・ディオールの1997年のキャンペーンで利用されたことで注目されたほか、「ライオン・キング」のコスチュームのインスピレーション源にもなったそうです。
タイ・アカ族の未婚女性の衣装も必見です。黒地にガラスビーズや貝のビーズがふんだんにあしらわれ、顔周りや頭部にはコインに穴を開けたビーズが使われていて、とてもゴージャス。
ゴージャス感ならこちらも負けていません。南アフリカのズールーの女性の婚礼衣装です。身につけているものはすべて、大小さまざまなビーズを組み合わせて作られています。
円状のモチーフを複数組み合わせて作られたビーズ細工は、ウエディングケーキを模したハンドバッグとのことです。結婚式という、人生のハレの日をより華やかに見せたいという思いが伝わってきます。
展示室中央にばかり目が行きがちですが、見どころは他にもたくさん。
この仮面は、ビーズを蜜蝋などで貼り付けることで、細やかな模様を作っています。ビーズの穴がすべて上を向くよう統一されているので、ぜひ間近で見ていただきたい展示品のひとつです。