そんなに簡単にはいかない
「きんちゃん~ほらぁ~ばぁばだよ~☆」
「じぃじが絵本読もうか?シュシュ~ポッポ~だよ?」
じぃじ・ばぁばが色々と話しかけてくれるものの、ムスコはと言うと、なんだか照れてうつむいてモジモジするだけ。
機嫌は良く、「きゃはは~!」と楽しそうに走り回るのですが、お得意のはずの『バシュ~』『でんしゃ~~』などのワードが出てきません。
「おっかしいなぁ~!ほらきんちゃん、この間みたいにお話してごらん!?」
そうワタシがけしかけても「んばばばぁ~!いきききぃっ!!」と喃語に逆戻り…。
結局、旦那の実家ではお喋りのお披露目をする事なく帰宅。
…あれ?おかしいな…ワタシの予想ではドンドン言葉を覚えて目まぐるしい快進撃を繰り広げる筈なんだけど…もしかして思ってたのと違う!?
そんな心配が見事的中し、その後のムスコは、『話すとき』と『話さない時』の差が激しくなってしまいました。
覚える単語も「ふゅみきり~カンカンカーン♪」「ぴ~ぽ~ぴ~ぽ~」などの電車や車ネタに偏っていたり、時には、お腹が空いているのに「いたーい!いたーい!」と絶叫するといった、間違った言葉の使い方をする事も…。
旦那とふたりで毎日、「おてて洗うよー」「もぐもぐゴックンだよ~」「くっく履いてね」「おかわり欲しいときは“ちょーだい”だよ?」「肩まで浸かって~」「ご本はなーいないいして!」「ハミガキしゅしゅしゅーだよ!」と事細かく声掛けしていても、8割方無言でスルー。
しまいにはムスコが話すカタコトの単語を耳にした同い年の女の子に「赤ちゃんがいる~!」と笑われる始末。
そうか…お喋りが上手な子からみるとウチのムスコは赤ちゃんみたいに見えるのかぁぁああ。
この余りにショックな出来事に、なんだかムスコを『恥ずかしい』と思ってしまった自分がいました。
ゆっくりと、でも着実に
落ち込んだまま2~3週間を過ごした後の事。
暗い顔で保育園のお迎えに向かったワタシに担任の先生が満面の笑みで「きんちゃんお喋りがすっごく上手になってきましたね!いい感じですよ!」と言ってきたのです。
「ええ…!?」と一瞬、耳を疑ったワタシに、先生は続けてこう言いました。
「前よりも『バイバイ』ってハッキリ言えるようになったし、こないだは園庭で『はーにゃ!はーい!』って拾ったお花をプレゼントしてくれたんですよ!」
今まで言葉の遅れに対して沢山相談にのってくれていた担任の先生は、ムスコの言葉に現れた小さな変化にちゃんと気づいて、教えてくれたのです。
そう、考えてみれば、ワタシは自分が言わせたいワードをムスコに詰め込むことばかり考え、結局また『新しい言葉を言えるようになったかどうか』しか見てえいなかったのです。
遅れているなら、どこかでその分を巻き返さないと追いつかない。
いつまでも会話でコミュニケーションをとれないまんまなんて大変だから、早く色んな単語を覚えて欲しい。
語彙が増えないといつまでたっても赤ちゃんから抜け出せない…!
そんな気持ちで接していたから、ムスコの『出来ていないこと』ばかりに目が行くようになっていき、『出来るようになったこと』をいろいろと見過ごしていたのです。
顔見知りの保育士さんにはかならず『ばば~い!』と手を振るようになったこと。
『新幹線』や『蒸気機関車』が大好きで「どぉ~れ?」と聞くと写真を指さして教えてくれること。
ご飯を食べながら「うまぁ~!」とほっぺを触るようになったこと。
「ぱっぱ」「まっま」をキチンと使い分けるようになったこと。
自転車で家に着くと『とうちゃ~く!』と言えるようになったこと。
他のみんなと同じレベルになれなくても、半年前のムスコに比べたら、とても色々なコミュニケーションが出来るようになっていたんだなぁ。
喋りはじめたら全員がアッという間にペラペラになれるわけじゃない。
ムスコみたいに終始ゆっくりな子もいる。
それでも昨日より今日のムスコは確実に成長してる。
それを積み重ねていく手助けをするのがワタシの役目なんだ。
『恥ずかしくないムスコ』を目指すんじゃなくて、『ムスコを恥ずかしがらない自分』を持とう。
そう決意したワタシは、ムスコをよくよく観察するように意識し、『ムスコが出来たことを褒めちぎる作戦』を早速開始!
「わんわーん!」とムスコが気づいただけでも「ホントだワンワンいたねー!よくわかったね凄いよきんちゃん~~!!」とテンションMAXで大喜びするし、
「しゅっしゅっぽっぽ~!」と言えば「機関車分かるんだ、きんちゃん天才か!?電車とは音が違うのよく覚えてるね~!」とベタ褒め。
もう子供をネコっ可愛がりする親バカにしか見えないので、ちょっと恥ずかしい気もしつつ、
でも、躍起になって単語を詰め込もうとあーしろこーしろ言い聞かせていた時にくらべたら、明らかにムスコの表情はイキイキしてきたような気がします。
言葉って、『楽しい』!
そんな山あり谷ありの2カ月ちょっとを過ごした2歳7か月の現在。
ムスコは、家では全く使っていなかった「おしり」というワードを連呼しだしたり、「じゅんばんじゅんばーん!」や「なーいなーい」「くちゅ~」「あっち!こっち!」など親の発言を真似っこすることが得意になってます。
ムスコの1日、1週間、1カ月がこんなに目まぐるしい変化を持つなんて、意識してなかったら分からなかったかもしれません。
言葉って面白いな。人に話しかけるのって楽しいな。というワクワクする感情が、ムスコの何よりの原動力になったんじゃないかと感じています。
この先、いつか来る小学校入学や勉強なども考えたらまだまだ今後も課題は多いのかもしれません。
しかし、毎日笑顔でムスコが暮らせるように、せめて一番近くにいる自分は、ムスコに過度な圧力をかけないよう気を付けようと思いました。
どんなことがあってもママは味方だよ。悩んでも迷っても、キミの存在を恥ずかしいなんてもう二度と思わないよ。どんなキミでも大好きだよ。
いつかムスコが『ママ大好き』と言ってくれる未来のためにも、大切な原点は忘れないようしっかりと胸に刻んで歩き続けます!
つづく
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