アンビリーバブル!! 午前1時半開店!!

【菊屋】壁際にござを敷いた板の間があり、仮眠用の寝袋が置かれていた

近くにタクシー会社があり、夜中に帰社するドライバーもいることから店を開けて待つ。壁際の座敷に寝袋の用意があり、帰社したタクシードライバーが寝ることもあるそうな。

午前1時半に店を開けて何時まで営業するんですか、竹之内さん?

【菊屋】「ボケないように暇なときは『ナンプレ』をやっているんだ」

「翌日の3時か4時まで。お客さんが来たら話もするし、働くだろう。それが元気の薬なんだ。お客さんがいないときは『ナンプレ』や『漢字ナンクロ』をやっているからボケない。定休日は元旦だけ。休んだのは入院したときだけ」

77歳のとき大腿骨を骨折。2か月間入院したが、帰宅後すぐに店を開けたそうだ。

「店を長期間閉めたのはそのときだけ」

【菊屋】 紙に書かれたメニューがペタペタと貼ってある

諸物価高騰で酒は値上げ。でも、カレーは据え置き

壁に貼られたメニューには日本酒、ハイボール、ウーロンハイなども書かれている。酒のアテなのだろう、さつま揚げやマグロ刺身、豚ホルモン野菜炒めなども出している。

酒好きには朝から飲める居酒屋が人気のようだが、菊屋は夜中から夕方まで飲めるというわけだ。飲んだ〆にカレーライスを頼む人もいるんだろうな、きっと。

とはいえ、戦争の影響で諸物価が高騰しているから飲食店は大変ですよね、竹之内さん?

「大変だよ。酒は値上げした。でも、カレーは据え置き。意地でも値上げしない」

【菊屋】 常連客はストーブのお湯で焼酎のお湯割りを作っていたっけ

多くを語ってくれなかったが、300円カレーを目玉商品としてメニューにかかげておけば、腹を減らした客や、私のように懐具合が寒い客が来てくれる。

竹之内さんとしては接客し、カレーを温めたり、酒を出すことで身体を動かす。それがなによりも元気の素であり、ボケないヒケツなのである。

ところで。

この店をジャンル分けすると大衆食堂になるのだろうか。大衆酒場なんだろうか。

【菊屋】東京スカイツリーの真下に、築64年以上の建物が佇んでいる

【菊屋】

住所/東京都墨田区向島3-45-1
電話/03-3622-6865
営業時間/1時半~15時か16時頃
定休日/元旦のみ

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。