「既婚者」からの一方的な関わり

これまで、お互いに恋愛感情を認めながら正面からつながることができなかったふたりであり、Aさんが既婚のステータスになったことで、交際の可能性は一気に消えたといえます。

ところが、Aさんは「これで彼を口説ける」と思ったそうで、先のない関係だからこそ「自由に好きでいられる」と考えます。

男性のほうは以前離れたときと変わらず、彼女もいなければ親しくしている女友達もいない状態で、Aさんと交流が戻ってまた気安く連絡を取り合う仲になりました。

「あなたのことは好きだけれど、既婚だから付き合えない」。男性に何度もこう繰り返しながら、Aさんは休日のたびにデートに誘ったり平日もLINEでメッセージを送ったり、密な関わりを持とうとします。

男性のほうは「旦那さんのいるAさん」に戸惑いながらもメッセージには返事をくれて休日には食事に行ってくれて、「昔のように馴れ馴れしくできないもどかしさが見えて、それはちょっと楽しかったですね」とAさんは感じたそう。

「旦那さんは大丈夫なの?」「問題はないの?」と約束のたびに男性が尋ねてくることが、Aさんには新鮮でした。

「夫の設定は、私と同じ正社員で同じくらいの収入、優しくて束縛しない人、と彼には伝えていました。

前に住んでいたアパートからは引っ越して今は夫とふたり暮らしとも話していて、具体的な場所などは言わなかったけれど、彼にはそもそも足を向けたい場所でもないからどうでもよかったと思います」

夫と幸せに生活していると嘘の報告をしながら、一方で男性に向ける恋心には蓋をしない自分が男性の目にどう映っていたか、そのときのAさんは考えていませんでした。