やっと気がついた彼の本心

男性と会っているとき、Aさんはよく「私が独身だったら」と仮定した話をしていたそうで、「そりゃ俺と付き合ってもらえるように口説く」と答える男性を見ると安心し、一方で「そんなたられば話はしたくない」と眉をしかめる様子に物足りなさも感じます。

「本当は独身だよ、と何度も打ち明けようとしました。

彼も『結婚したのは嘘じゃないのか』と尋ねてくるときがあって、毎週末デートに誘う私を見れば、夫の存在を感じないのも今はわかります。

それでも、私が独身だとわかったところでこの人とは私の望む交際はできないのだ、と今までのことが頭をよぎると、既婚のままで彼に求められるほうがいいのかも、と思いましたね……」

彼と恋人関係になるのなら自分が我慢する一方になる、という思い込みが、当時のAさんにはあったそうです。

それなら既婚でも独身でも変わらない、また苦しい思いをして別れるくらいなら、肉体関係は持てなくても今のまま彼の好意を引っ張るほうが、自分は幸せかもしれない。

そう思ったAさんは、車のなかで手を握り合う瞬間があっても「本当は独身」という真実を口にしたいのをこらえ、「既婚でも彼に求められる自分」に酔っていた、といいます。

以前より距離のあるつながりでも、「LINEで好きと送れば彼も同じように返してくれて、これはこれで安定しているのでは、と勝手に思ってしまったのですね。先のない関係だけど、彼も今の状態で満足しているのかも、と何も聞かないままでした」と、Aさんは彼の気持ちを確認しませんでした。

そんなふたりのつながりが崩れたのは、あるとき彼から「やっぱりこんな関係はつらいから、もうやめたい」と突然メッセージが届いたことがきっかけでした。

「君が何を考えているのかわからない、と書いてあって、旦那がいながら別の男に好きだと言えるのはどうしてか、俺とは今後どうしたいのかって、初めて長文をもらいました。

彼が『たられば話は嫌いだ』と言うのに私はずっと『独身同士だったら』と話題にするのが止まらなくて、それで喧嘩になった次の日のことです。

それを読んだとき、ああ彼は苦しんでいたのだな、とやっと気が付きました」