里親になるのはどんな人が多い?

大西敦子さんは、NPO法人日本こども支援協会の立ち上げから、里親制度の普及と、里親になった方たちのサポートに関わってきました。

里親になるのはどんな方が多いのでしょうか?

大西さん「年齢層では40代から60代の方が多いです。厚生労働省のデータでは、全体の6割が50代以上となっています。

子育て経験がある里親さん、子育て経験のない里親さんの割合は半々ぐらいです。

不妊治療を経てこどもを授からず、実子を持つことは諦めたけど、『子育てに関わりたい』ということで里親になられたご夫婦もおられます。

共通しているのは、多くの方が『こどもたちのために何かしたい』『こどもたちの未来に貢献したい』という思いを強く持っていることです」

里親はこどもたちの未来にどう関わる?

里親はこどもたちの未来にどう関わっていくことができるのでしょうか?

大西さん「日本において児童養護施設の入所理由で一番多いのは『親の虐待(45,2%)』。次いで『親の就労・経済的理由(9,2%)』です。

愛情や適切な養育環境を与えられず育つ子は、意欲や自己肯定感が低下します。周囲とうまくコミュニケーションを取ることができず、人間関係において孤立しやすくなります。

また、成長し、自分が家庭を持つときに、どう子育てしていいのか分からず、孤立してしまい、子育てが難しい状況に陥ることにも繋がります。

里親は、こどもに安心して暮らせる環境と愛情を与えることで、こどもの意欲や自己肯定感の向上、精神的・経済的な自立をサポートすることができます。虐待の連鎖を止める手がかりにもなり得ます。

こどもの視野を広げることができというのも、里親としての大きな役割であり、やりがいと言えるでしょう。

里親家庭には、児童養護施設にはない、その家庭にしかない独自の物がたくさんあります。

ゴルフが好きな方の家には、ゴルフに関するグッズや本がたくさん置いてあるでしょう。小説が好きな方の家には、たくさんの小説が置いてあるかと思います。

その家庭独自の習慣やルールもきっとたくさんありますよね。

里親家庭で暮らすことで、こどもは今まで知らなかったことを知り、いろんな価値観があることを学べます」

里親制度の課題と、それを支える仕組みについて

里親制度には大きな課題もあると言います。

現状、どんな課題があるのでしょうか?

大西さん「登録里親数は徐々に増えていますが、委託後1年未満で25%、4人に1人の里親がギブアップしているという報告もあります。

育てられない親の代わりにこどもを育てるという大切な役割を担う里親。ギブアップしてしまう里親が減らないのは、里親が抱える悩みや苦悩を吐き出すことができない環境や構造に大きな原因があります。

里親の子育てには、社会からの理解と手助けが圧倒的に不足しているのです。

そうした現状を打破するために、NPO法人日本こども支援協会はさまざまな活動を行なっています。」

NPO法人日本こども支援協会の、里親を支える主な活動を以下にご紹介します。

オンライン里親会『ONE LOVE』

すべての里親が繋がり支え合えるコミュニティを運営しています。同じ悩みを持った里親仲間と辛い気持ちを共有したり、先輩里親に悩みを打ち明けることでアドバイスをもらうこともできます。オンライン里親研修や養育講座も開催しています。

里親に必要な情報を届ける『里親ガイドブック』

全国の里親、またこれから里親になる方に、必要な情報を適切に伝えるためのサイトを運営しています。地域や地方によって情報の格差が起きないよう、全国で悩む里親を応援し、里親の離脱を防ぎます。

いざというときのための『里親保険』

こどもが怪我をした、トラブルで物を破損してしまった…そんないざという時のために保険は不可欠です。行政が負担すべき里親の保険ですが、地域によっては里親が負担しているケースもあります。その保険料を里親の代わりに全額負担しています。

大西さん「里親は、社会全体で子育てをしていく要となる大切な存在です。その里親たちを社会全体で支えていくという意識を持たなければ、ギブアップしていく里親は減らないままでしょう。

当協会では、10月4日の里親の日®、そして10月の里親月間に向けて、毎年『ONE LOVE全国一斉里親制度啓発キャンペーン』を行っています。社会的養護が必要なこどもの人数と同じ4万2千枚のハートのチラシを作り、配布しています。

FacebookやInstagramなどのSNSを通して、里親や施設の職員、4万2千人のこどもたちに応援メッセージを送ることもできますので、ぜひ参加してみてください」

里親にはなれないけれど、「里親たちを応援したい」「親と暮らせないこどもたちを支援したい」という方は、『寄付里親』という形で、NPO法人日本こども支援協会の活動を支えることができます。ぜひホームページをご覧になってみてください。

【取材協力】大西 敦子(おおにし あつこ)

NPO法人日本こども支援協会の前理事。現在は「中の人」として主にサイト運営や里親たちのサポートを行う。選択理論心理士。

大西敦子(NPO法人日本こども支援協会)

【参考】
NPO法人日本こども支援協会

ONE LOVE全国一斉里親制度啓発キャンペーン

ONE LOVEオンライン里親会

児童養護施設入所児童等調査の概要(平成30年2月1日現在)ー厚生労働省子ども家庭局 厚生労働省社会援護局障害保健福祉部 令和2年1月

3万人を超える人の悩みを解決するコーチ&カウンセラーとして活躍。 2010年、その経験を活かしてコミュニケーション心理スキルを紹介する、コミュニケーションライターとして独立。一般社団法人日本聴き方協会認定シニアインストラクター・認定シニアカウンセラー。 [ブログ]