その動画の撮影時には、藤ヶ谷が本当の教師のように自らみんなに「左手で仮面を持って、右手で手を振り、僕が『劇場版』と言ったら『仮面ティーチャー、キャー! でお願いします』と演出。

練習の際の声を聞いて「小さくない? もっと大きな声で」と修正することも忘れなかったので、本番ではみんなの声と想いがひとつになる最高の動画を撮影することができた。

遠藤と斎藤と藤ヶ谷の3人はここで退場。ところが、最後に会場を出た藤ヶ谷がもう一度戻ってきて、両手で手を振り、場内に最後の「キャー」という歓声が。さすが藤ヶ谷くん、彼がファンの心をちゃんとつかんでいることを印象づける、そして映画の大ヒットを予感させるひとこまだった。

ここからは、いよいよ映画の上映だ。果たして、この日集まってくれた人たちがどんな感想を持ったのだろう? みんなが気になるそこのところを思いがけない人が伝えてくれた。なんとこの日、一般のお客さんと一緒に、ドラマ版に続いてメガホンをとった守屋健太郎監督も自作を鑑賞していたのだ。その守屋監督によると、「剛太と羅門が激突するクライマックスではすすり泣く声が聞こえてきた」のだとか。しかも、熱心なファンから上映終了後に「監督ですよね」と声をかけられ、確かな手応えを得たようなのだ。

というわけで、サプライズ尽くしの完成披露プレミア上映会もとどこおりなく終了……と観客も、多くのマスコミも思っていたに違いない。

しかし、ある人物にとってはここからが仕事の本番。そう、神出鬼没の我らが仮面宣伝マンが、観客が場内で盛り上がっている間にロビーで待機。興奮して出てきたファンの方々に、最後のサプライズとして『仮面ティーチャー』特製のポケットカレンダーを配るのだ。

19時40分。予定より5分ほど遅れてそのときは来た。次々に出てくる人、人、人……一瞬にして仮面宣伝マンは取り囲まれ、無数の手があちこちからカレンダーを配る仮面宣伝マンに向かって伸びる、伸びる。

後で聞いたら、仮面の中から見えるその光景は千手観音の手のようだったみたいで、中には「見~つけた」「やっぱりいた」と言う、彼が外で待っているのをちゃんと予想していた強者もいたとか。

そんなファンの方々に、声を出してはいけない、正体を明かしてはいけない仮面宣伝マンは一枚一枚カレンダーを丁寧に配っていく。

前回の日枝神社のヒット祈願のときと同様、もちろんスマホで写真を撮る人たちも後を絶たないが、写真撮影のタイミングになると仮面ティーチャーのように胸の前で拳を握った腕を固定してポーズをとり、再び配り出すと物腰が低くなるところに仮面宣伝マンの人柄が表れていて、なんだか微笑ましい。

用意していた600枚のカレンダーはあっという間になくなった。直後に、ファンの方々のツイッターにその様子が写真とともに上がっていたので、彼の地味な活動もじわじわと効果が出てきているのかもしれない。

いずれにしても、『劇場版 仮面ティーチャー』の公開まで後1ヶ月を切った。公開直前の2月14日(金)午後9時からは日本テレビの金曜ロードSHOW! 特別企画として、深夜ドラマ版の半年前を描く藤ヶ谷太輔主演の『仮面ティーチャー』のスペシャルドラマの放送も決定。映画を盛り上げるさまざまなイベントとともに、全国をめぐる仮面宣伝マンの多くの人の「心」に訴えかける活動はまだまだ続くのだ。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。