横浜市「市では幼稚園の認可を出せない」

萩原さん(左)と春原さん

子育て支援課幼児教育係の萩原さん、こども青少年局子育て支援係の春原さんに時間をいただいたのだが、開口一番残念な答えが返ってきた。

「横浜市は私立の幼稚園が多いので、幼稚園は十分に足りているという判断です。ですから今後、市立の幼稚園をつくろうという動きはないと思います」
と萩原さん。それは行政の財政状況が問題なのだろうか?

「経済的な理由もないとは言えないでしょう。しかし市では地域の子育て支援。例えば助成金の斡旋や地域の子育て支援拠点の運営などを行っていますが、私立幼稚園の認可や幼稚園の運営は管轄外なのです。ですから、なぜ市立の幼稚園がないのか、また廃園になってしまったかということに関しては市ではわかりません」

 

その世帯の市民税額によって補助金額が決まっている就園奨励補助金

保育料については、就園奨励補助金を設け一般的な公立幼稚園の保育料相当の負担額になるようにサポートしているという。ただ、肝心の市立幼稚園がなぜないのかについてはわからなかった。

ということで認可を担当する神奈川県に確認してほしいと神奈川県民局くらし文化部学事振興課を紹介された。

 

神奈川県「私立に関しては管轄だが、市立は管轄ではない」

写真撮影NGだった

お話を伺ったのは、文化部学事振興課の坂本さんと萩谷さん。

しかし、市に紹介されたはずなのに、ここでも残念な答え。

「私たちは私立の幼稚園から専修学校までの設置認可を担当していますので、市立についてはわかりません。なぜ、横浜市がうちの課を紹介したのかもわかりません」
とのこと。結局たらい回しだ。縦割り行政の本質を見た気がした。

現在市立の幼稚園はゼロだし、市立のことは管轄外だから、市立の幼稚園が無い理由も廃園になった理由もわからないと言いたいのだろう。どうせ少子化にかこつけた財政難ではないのか?しかし、何度聞いても、同じことしか言わない。

市と県から答えをもらえなかった以上、“キニナル”の答えは出ない。無念だ。

 

すべてが廃園、市立幼稚園

『横浜市教育史』

答えが出ないということで終わっても仕方ないので、『横浜市教育史』(横浜市教育委員会刊)をひも解いてみる。

現中区に横浜小学校付属幼稚園が設立されたのは明治17年とされている。その後、明治31年には現西区に老松小学校付属幼稚園が設立。この2園ができてからは、しばらく市立の幼稚園は設置されなかった。

小学校令の改正(明治32年)により、小学校の拡充を図らなければいけなかった市の財政難であると推測されるが、これは横浜市に限ったことでなく全国的に見られる傾向であったようだ。

その後、昭和6年に戸塚尋常高等小学校(現戸塚小学校)の付属幼稚園が設置されるも、この3園はすべて廃園になっている。

ちなみに神奈川県立も1園あった。
神奈川県立横浜幼稚園(西区)だが、こちらもすでに廃園している。