他人に支配される思考

彼氏から「ゲーム好きで話が合うのはわかるけど、その人との付き合いはちょっと考えたほうがいい」と言われた晶子さんは、Aさんの話を聞くことにすっかり疲れており距離を取ることを決めます。

「仕事が忙しくなるから、これからは電話とかLINEは難しくなるかも、とメッセージを送りました。

そうしたら、『元カノもそう言ってだんだん連絡が来なくなった』って返事が来たのですね。

それを読んだときに、ああもうダメだと思いました」

どんなことも「元カノ」に置き換えるAさんの姿を見て、これ以上会話はできない、とはっきりと思ったそうです。

晶子さんから見たAさんは「まるで元カノさんに支配されているようでした」と振り返りますが、別れているにも関わらず思考の基準がその人になってしまうのは、依存状態といえます。

言動や振る舞いを自分で決めているつもりでも、その選択のベースには他人の姿があり、その人の言動や振る舞いによって自身の気持ちが左右されているのですね。

Aさんと晶子さんの関係のはずなのに、晶子さんの状況に元カノの有り様を持ち出すのは、そこに晶子さんはいないのと同じです。

友人であれ、そんな流れになる会話が楽しいと思えるはずがなく、晶子さんはそれきりAさんとは連絡を取らなくなったそうです。

別れた元恋人への未練をどう扱うか、SNSの投稿を利用して情報を得ようとする気持ちはわかるけれど、向ける関心も度が過ぎれば自分を追い詰めます。

ほかの人との関係にまで悪い影響が出るのは、執着は視野を狭くして自分の考え方や言動のおかしさに気がつく隙間がなくなるからです。

「いい友達だったけど、元カノさんのことで頭がいっぱいでは前向きな話ができないし、どう接していいかわかりません。

申し訳ないけど、遠ざけないと私までどんどん気が滅入るので……」

ため息をつきながら、晶子さんはスマートフォンに視線を向けました。