「おせっかい」になる気遣いとは
Aさんから電話があったとき、麻美子さんは「少し機嫌が悪かった」といいます。
自分の好意を無にされ、その後の報告もしないAさんの状態に傷ついていました。
「例の好きな人とは無事にIDの交換ができたと言っていました。それは素直にうれしかったし、よかったねと答えたのですが……」
麻美子さんが驚いたのは、それから後のAさんの言葉です。
「心配してくれた気持ちはうれしいし、わざわざ電話をかけてくれたのもありがたいと思っている。
でも、あのときは本当に彼と話している最中で、何回もかかってくるから彼が気にして『出たら?』って言われて、話が中断したのね。
かけなくていいって私は言ったのだから、それを受け入れてほしかった」
と、あのときの状態について話してくれたそうです。
「何ていうか、自分のしたことは完全におせっかいだったのだと気が付きました。
1回目で出ないときにやめればよかったとそのときは思ったのですが、後になってそもそもAの時間に割り込むことそのものがまずかったのだなって……」
Aさんは怒っていたわけでは決してなくて、ただ「自分で何とかするつもりだった」と繰り返し麻美子さんに伝えました。
「電話に出なかったら察してくれるかなと思った」
というAさんの言葉が、麻美子さんの心には今も深く残っています。
自分はあくまでも好意で、助けるつもりで提案したことでしたが「かけなくていい」と断る友人の気持ちを考えておらず、そのときになっても自分の気持ちを押し付けていたのが事実でした。
「気遣いじゃなくて、ただのおせっかいですよね」
麻美子さんは深くため息をついて、Aさんへの申し訳なさにまたうなだれました。