9月3日より全労済ホール/スペースゼロで公演中のミュージカル『AMNESIA re:again』(アムネシア)は、同名の乙女ゲームを原作とした舞台である。1月にも舞台化されており、今回は一部キャストを入れ替えての再演となる。漫画やゲームのミュージカルがここ最近増えているが、果たして本作はどんな作品に仕上がっているのだろうか。男性の筆者の視点でその魅力をレポートしていきたい。
ゲームからそのまま飛び出してきたような"再現度"の高さ
筆者は男性だが、乙女ゲームは過去にそこそこプレイしており、それなりのゲーム好きを自称している。ただし、本舞台の原作である『AMNESIA』については未プレイで、簡単な世界観や登場キャラクターの知識のみを事前に仕入れていった。つまり、ストーリーなどについてはまったく知らない状態である。
『AMNESIA』は2011年にオトメイトから発売されたPSP向けの乙女ゲームだ。プレーヤーは大学1年生の主人公となり、様々なタイプの男性キャラクターと恋を育んでいく。
舞台がスタートすると、まずはキャストのお披露目を兼ねてのダンスと歌。シン(山崎大輝)、イッキ(畠山遼)、ケント(小林涼)、トーマ(井澤勇貴)、ウキョウ(磯貝龍虎)、オリオン(山田諒)といったメインキャストたちが姿を見せ、きらびやかな衣装で楽しませてくれる。まるでゲームからそのまま飛び出してきたような"再現度"の高さが、この舞台の持ち味だ。
そして物語がスタート。主人公はパンフレットにも「主人公」としか書かれておらず、名前は付けられていない。ここは原作のゲームを踏襲した形だが、しかしまさか「主人公」と呼ぶわけにもいかないだろう。どうするんだろうと思いながら見ていたら、結局最後まで「主人公」の名前を呼ぶセリフは出てこなかった。その代わり、男性キャラクターの名前を呼ぶシーンがとても多いので、誰がどのキャラクターなのかということについては、見ているうちにスッと頭に入ってくる。初見でこれはありがたい。
乙女ゲームというと、甘くてほのぼのした世界観を思い浮かべる人も多いと思うが、『AMNESIA』はそうではない。8月1日より前の記憶を失ってしまった主人公が、自らを「精霊」と名乗るオリオンと出会い、記憶を取り戻すまでの物語だ。
なぜ主人公は記憶を失ったのか、誰を信用して誰を疑うべきなのか――謎が謎を呼ぶ展開はサスペンス的であり、純粋に一つのストーリーとして面白い。