台湾スイーツが人気らしい。その昔、中国をひとりで放浪したことがあるが、台湾も台湾スイーツも未体験。
吉祥寺に小さな台湾があるという。台湾スイーツが好評だと聞きつけ、出かけることにした。
昭和の下町にあったような玄関から入り、階段をのぼっていく。どこかで見たことがあるような、懐かしい佇まいが出迎えてくれた。土壁。木製の椅子と木製テーブル。アンティークなガラス製ランプシェード。
派手さはないものの、心を落ち着かせてくれる空間が、いまも進化を続ける吉祥寺の繁華街の一角に存在するのだった。
「昭和45年頃の、台南のおばあさんの家をイメージした店舗を自分でデザインしました」と教えてくれたのは、この店「台湾cafe月和茶(ユエフウチャ)」代表の楊明龍さんだ。
楊さんは続ける。「台湾は、大陸の文化を持ちつつ、台湾独自の文化や日本に統治されていた頃の文化に加え、その昔、オランダ人が統治していた頃の文化も兼ね備えています」
楊さんは20年前、世田谷の経堂(現在は閉店)に「月和茶」を開業。10年前、吉祥寺に店を構えた。
「子どもの頃、おばあさんと母が薬膳を作ってくれました。ふたりのおかげで薬膳に親しんできたこともあり、うちの店では白キクラゲ、ナツメ、クコの実、ゴマなどの薬膳素材を用いた料理を提供しています」
医食同源が台湾料理のベースだ。この店もそんな台湾の医食同源を踏襲。朝鮮人参を使った「人参鶏」や、八角や陳皮、桂枝などの漢方を用いた「紅焼牛肉」といった台湾料理をランチメニューに掲げている。
けれど、今回は、未知の台湾スイーツを体験させてもらうことにした。
まずは、「月和茶聖代」(880円)。
漢字で書くとやや堅苦しいイメージがあるが、ご覧のように台湾流パフェ。といっても、ただ甘いだけのデザートではない。台湾で親しまれてきた薬膳素材を用いたパフェだ。
たとえば、台湾中部の山中で育つ仙草という薬草を煮詰めたゼリーが入っている。仙草には、高血圧や二日酔いに効果があるといわれてきた。
愛玉(木の実)のエキスで作った愛玉ゼリー。愛玉には、美肌効果があるとされ、女性の間で人気が高い。その他、クコの実、白キクラゲなども使っている。
アイスが入った冷たい薬膳パフェだが、冬は冬で、温かい店内で食べる月和茶聖代も美味そうだ。
台湾といえば、お茶。台湾茶とお菓子のセットもある。