同じ状況下でも、ストレスをため込んでしまう人と、そうでない人がいます。「気にしなければ良い」とか「受け流せば良い」と頭ではわかっていても、考え方を根本的に変えるのは簡単ではありません。
そこで、ストレスが生まれる仕組みからその対策を探ってみましょう。
ストレスを抱えてしまう仕組み
文明の中で言葉を操って生活している人にも原始時代から続く動物的本能が残っています。その中にストレスも含まれます。
はるか昔の原始時代において、ストレスとは、自分や自分が大切にしている対象(家族や仲間etc)に危険が迫ったときの生体反応だったのです。いざ危険が迫ったとき、自分や自分の大切な対象の身を守るために、脳は戦闘モードに入り、「戦え!」あるいは「逃げろ!」と指令を出すのです。
つまり、脳内を戦闘モード(ストレス)にするホルモンを通称“ストレスホルモン”といいます。ストレスホルモンとは、ストレスを感じたときに分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の総称です。
これらストレスホルモンが分泌されると交感神経を刺激し、血圧や心拍が上昇、筋肉の緊張、毛細血管の収縮、血糖値上昇といった生体反応(ストレス反応)が起こります。このような興奮し、緊張した状態で戦闘モードに入ったとき、実際に戦うか逃げるか(戦闘)の行動に移してしまうと、ストレス反応が有効に行動に反映されて、脳内のストレスホルモンは使用されて消えてしまいます。
しかし現代においては、原始時代さながらの“戦闘”は起こりません。文明が進み、人の生活圏が平和で便利になっていくにつれて、脳が“危険”だと察知するストレス現象も変わってきました。そして、その対処方法も“戦う”、“逃げる”といった原始的方法ではなく、知恵を使い、文明の機器を利用し、或いは言葉を操り、最終的に事態を終息するといったふうに変化してきたのです。
しかし、そうなるとストレスホルモンが、有効に行動に反映されないまま行き場を無くし、脳内に残ってしまいます。そのため、事態が終息を迎えたにも拘らず、ストレスホルモンがストレス反応を継続させてしまいます。
このようなストレス反応の継続は、心身ともに緊張状態させ、肩こり、冷え性、睡眠不足等々、さまざまの身体への悪影響を及ぼします。また、ストレスが続くと免疫機能も低下すると報告されています。
こうして人間は文明が発達するにつれて、ストレスに悩まされるようになったのです。