プロローグ 安南陶器ニセモノ事件
わざわざニセモノを土に埋め、嘘の発掘ビデオまで制作し、偽安南陶器を客に売りつけた。 ちなみにこの展覧会は照明にもかなり気を配っているらしく、展示品が美しく照らし出されている。その照明のおかげか、素人目にはなんだか高そうな陶器に見えてしまう。ホンモノを知らないと、ニセモノと判断することも出来ないのだ。
1.暮らしの中のフェイク
並べられた小判のうち、どれが偽物の小判か分かるだろうか? どれも本物そっくりだが西谷さんの特別ヒントによると、どれかは“ガチャポン”のおもちゃだそう!
沢山の掛け軸も展示されていた。“画聖”とも呼ばれた水墨画家の雪舟。雪舟の絵を持っていることは大変な誇りであり、各大名家はこぞってこれを求めた。しかし、実は雪舟の作品は日本に10点程しかないそうだ。それに対して大名家の数は当時およそ300で、とてもではないが足りない。雪舟作品にニセモノが多いというのもうなずける。
皮肉なことだが、有名過ぎるとニセモノだとばれる確率も高くなってしまうので、そこそこ名が売れている程度がいいそう。
『教授のつぶやき』というコメントも必見。「これは偽物です」と言われると、どこがどうニセモノなのか? を知りたくなってしまうのが人の性。そんなポイントを分かりやすく解説してくれる。“教授”は特にモデルがいるわけではなく、美術界の様々な人の意見をまとめたものらしい。
某お宝鑑定番組の影響か、 こうした芸術品がニセモノなのか? ホンモノなのか? ということに注目が集まりがちだが、ニセモノ=ダメという訳ではない。それがこの展覧会の大きなテーマのひとつでもある。
例えば宴会や接待など、人間関係を円滑に進めるための場所には、喩えニセモノと言えど名品が必要である。