ヨハネス・フェルメール《天文学者》1668年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF – DNPartcom

そうした中で、目の前にある日常生活をそのまま描くのではなく、色々なメッセージ性を込めた作品に発展していく風俗画。フェルメールの『天文学者』もそのひとつで、描かれている本や星座を配置した天球儀は実在するものですが、描いた半世紀も前に世に出たもの。ただ、天文学者が羽織っている日本の着物に似た衣服は、実際に当時、オランダで「日本の上着」と呼ばれ、富裕層に大流行した衣服らしいですよ。

他にも、グレーズの『割れた水瓶』という少女の絵は、美しい少女がこちらを見つめるとても印象的な絵ですが、うつろな目で真っ白なドレスは乱れ、幸せそうな表情ではありません。手に持つ割れた水瓶は、瓶を泉に持って行きすぎると壊れるということを表し、あまり危険を犯すと身を滅ぼす、というメッセージが込められているそうです。

人の暮らしの中にあるといえば、恋愛!

男女が生活している中で、いつの時代も欠かせないのが恋愛ですよね。日常を切り取る風俗画でも主要なテーマ。

ギャンブルやお酒、タバコなどを楽しみ、楽器をひいて騒いでいるようなシチュエーションは不道徳に警鐘を鳴らすもの。17世紀のオランダでは恋愛マニュアル的な指南書があったほど、恋愛に対しての世間の目は厳しくなかったようですが、やはりハメを外しすぎるのはNG。

ヴァトーの『ニ人の従兄弟』は、庭園に集うひとりの男性とふたりの女性を描いた1枚。男性は座っている女性にバラを贈り、とても幸せそうな雰囲気。ところが隣に立つもう片方の女性は、湖の方を眺めて後ろ姿しか見えません。隣のふたりの男女を見ているのか、湖の中央にある愛の女神「ヴィーナス」の彫像を見つめているのか……その表情を知ることはできませんが、3人の関係を想像すると、いろいろなストーリーが広がります。

こういった、女性の目線がどこを見ているのかわからないものだったり、わかりやすい三角関係の恋模様だったりが描かれている作品もあり、いろいろ妄想が膨らみます。いつの時代も恋愛はドロドロなんですね。

しかしドロドロな恋愛とは裏腹に、描かれているドレスなどの衣服はきらびやか! うっとりとその衣装に目を向けながら、登場人物たちの恋路を想像してみるのも面白いのではないでしょうか。

室内以外にも、“狩りデート”も楽しんでいたよう。ランクレの『狩りの食事』は、男性たちとともに、狩りの合間とは思えない、ふんわりとボリュームのある華やかなドレスを身にまとった女性たちが、楽しげに食事をしています。こんな恋を楽しめたら素敵!

ティツィアーノ《鏡の前の女》1515年頃
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Franck Raux / distributed by AMF - DNPartcom

まだまだ女性や画家を描いた魅力的な作品や、レンブラントが聖人を普通の人のように描いた作品、フラゴナールの流れるようなタッチの躍動感ある嵐の絵など、見どころは盛りだくさん。各国・各時代の「顔」ともいうべき巨匠画家たちの名画が集結したこの展覧会で、どっぷりと風俗画の世界に浸ってみてください!

シルバーウィークに京都観光&ルーヴル美術館展コースもありかも?

【ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄】
会期:
2015年6月1日(月)まで 国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
2015年6月16日(火)~9月27日(日) 京都市美術館(京都市左京区・岡崎公園内)