『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』と、これまで数々のヒット作を生み出してきた細田守監督。同氏率いるスタジオ地図がこの夏に贈るのは、ひとりぼっちの少年・九太とひとりぼっちのバケモノ・熊徹との出会いと成長を描いた親子の物語だ。
細田作品では、これまでもさまざまな家族の姿が描かれてきたが、今回、バケモノと少年という新たな疑似家族をモチーフに据えたことにはどんな思いがあったのだろうか。スタジオ地図代表取締役であり、同作のプロデューサーも務めた齋藤優一郎氏にお話を伺った。
「家族」を描き続ける理由
――『バケモノの子』では、ひとりぼっちの少年・九太が強さを求めてバケモノの熊徹に弟子入りしますが、激しくぶつかり合いながらも互いに信頼を深めていくふたりの描写には、新たな家族の形を垣間見ました。細田作品では、これまでもさまざまな家族の姿が描かれてきたと思いますが、そこには何か一貫するテーマがあるのでしょうか?
齋藤優一郎プロデューサー(以降、齋藤):おっしゃるとおり『サマーウォーズ』以降の作品では常に家族をモチーフとし、その新しい形を描くことにチャレンジしてきました。細田守監督は「映画は到達可能な理想を描くもの」という思いと哲学を持つ方なので、これまでも自身の体験を通して見た現実を描き、身近な出来事をモチーフにアニメーション映画を作ってきたのです。
たとえば、『サマーウォーズ』で描いた大家族の姿は、監督が奥様のご実家に行かれた時に感じた驚きや家族のすばらしさが着想のきっかけとなっていますし、 『おおかみこどもの雨と雪』では、『サマーウォーズ』の製作中に亡くなられた自身のお母様への思いや、親になることへの憧れが映画製作の動機となっていま す。
――「身近にあるものを描く」という監督のモットーが原点となっているのですね。『バケモノの子』は、細田監督にお子さんが生まれたことがきっかけとなり作られたとのことですが、そこにはどんな思いがあったのでしょうか?
齋藤:『おおかみこどもの雨と雪』の公開後、細田監督には男のお子さんが生まれました。我が子の成長を見守る中で、「子どもたちの成長と未来に対して大人は何をしてあげられるのか」と考えた監督は、映画を通してその課題と向き合うことにしたのです。監督は日ごろから、「自分の家族に起きている喜びや問題は世界中の家族にも起きていて、自分たちの家族の問題を解決することができたのなら、世界中の家族の問題をも解決できるのかもしれない」とおっしゃっています。そんな思いが、やがて『バケモノの子』の企画へとつながっていったのだと思います。