日本中の植物園が協力しても、集まらない植物たち!?
世界中を飛び回り、貴重・希少な植物を仕入れている、プラントハンター・西畠清順(にしはた せいじゅん)さん。幕末から150年にわたって続く、花と植木の卸問屋・花宇の五代目。日本全国・世界数十カ国を旅して、収集する植物は数千種類にも及ぶ。
半年の準備期間を経て彼が集めた超・貴重植物の中から、およそ50種類を展示する「ウルトラ植物博覧会」が、7月3日(金)~8月16日(日)銀座ポーラミュージアムアネックスにて開催されている。
「日本中の植物園が協力しても、これだけの植物を一堂に集めることは無理ですね」と、笑顔で話す清順 さん。
普段は美術館として使用されている会場だけあり、「植物の美術館」のようなおごそかな空気が漂う会場。熱帯、温帯域、乾燥地の植物が一堂に展示されている摩訶不思議な空間だ。
命がけ! 超危険地帯で採取された植物も。
展示植物は、清順さん以外の人には、その管理方法が複雑すぎてわからないというほどの“レアもの”ばかりだ。
一見、どこにでもありそうな植物だと思ったら、そのハントエピソードがものすごかったのが、こちら「シッサス」。
現在、情勢が不安定な中東地域でのプラントハントはほぼ不可能だ。このシッサスはアラブの春が起こった、まさにその日にハントした貴重な一品。
当日、異様な検問の多さの中で銃を持ってジープに箱乗りする、あきらかに品のよろしくなさそうなアーミー服の面々に遭遇。「絶対に目を合わせちゃいけない!!」と同行していたカメラマンの方から釘を刺されたという。
「『ハロー』って挨拶したら、後で同行者にめちゃくちゃ怒られました。映画『シティ・オブ・ゴッド』の世界でしたね」と、ニコニコ話す清順さん。命を懸けたプラントハンターの一面を垣間見る……。
食虫植物の「ウツボカズラ」。意外にも清順さんが、植物の世界に興味を持ったのは、二十歳を過ぎてから。きっかけとなったのは、最大の食虫植物「ネペンテス・ラジャ」に出会ったことだった。
「ボルネオ島のキナバル山標高3000メートルで見た、その存在感と異物感に圧倒されました。こういう植物を探して持ってくる仕事に興味が沸いたんです」
その世界最大のサイズを超える可能性があるのが、展示されているウツボカズラ。フィリピンの自生地では10メートルを超え、虫だけでなく哺乳類も捕食するそう。
超・貴重種の「金目孟宗竹(キンメモウソウチク)」。竹というと、日本古来の植物のように思えるが、遠い昔日本に伝わってきた外来種だ。緑色と黄金色が交互に節を彩る突然変異のこの株は、日本で発見され観賞用に栽培されている品種。
まるで会場のサイズにぴったり合うよう成長したかのように、ぐるりと曲がっている姿がなんとも不思議……。
枝でなく、幹に実がなっている……!?「ジャボチカバ」が付ける実は、“一度食べたら必ずファンになる”と言われるスペシャルフルーツ。ただし、残念ながら輸送が困難であるため、日本には出回っていない。
葉っぱまで、爽やかな柑橘類の香りがする「仏手柑(ブッシュカン)」。“不老不死の珍果”として、インドから中国を経て日本に伝わった。縁起物として正月飾りに重宝するのも、納得の存在感。ぜひ、近くで香りも楽しんでみてほしい。