突然ですがウレぴあ総研をご覧の皆様、今年は明治・大正・昭和の半世紀にわたり、独自の耽美的な世界を構築し、膨大な数の作品を発表した、文豪「谷崎潤一郎」の没後50年だということを、知っていましたか?
谷崎潤一郎の代表作は『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』など、たくさんあります。そのほとんどが、既成の倫理観に縛られず、悪魔的な美と大胆なエロスを追及したものです。とんでもない悪女が出てきて、男をどんどん破滅させていく作品も多いです。
「文豪」と聞くと、何だか難しく、とっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。今回は、谷崎潤一郎をはじめ、あの有名な文豪たちが書いた、今も読み継がれる「官能文学」を5つ、ご紹介したいと思います。
「女王様と奴隷」究極の “マゾ”の世界
男がいつも、女に徹底的に翻弄される作品を描く文豪、谷崎潤一郎。最初の本格的小説『誕生』を発表した明治43年から、半世紀以上も文壇で活躍し続けた文豪です。教科書には載らないような、エロティックで美しい作品をたくさん描いています。
「全部おススメです!」と言いたい作品ばかりを描かれる文豪ですが、今回は絞りに絞って『痴人の愛』と『春琴抄』の2つをご紹介します。
『痴人の愛』のヒロインは、絶大な肉体的魅力を持つ、美少女「ナオミ」です。エリート・サラリーマンで、高給取りの譲治は、自分好みの女に育て上げ、いずれ妻にするつもりで、14歳も年下の、まだ15歳であったナオミを引き取ります。この設定からして、「うわぁ……(汗)」と言いたくなりますよね(笑)。
一緒に暮らし始めた始めこそ、まじめに勉強し、生活していたナオミですが、ナオミが成熟し、妖艶さを増すにつれて、彼女の態度は変わり始めます。
彼女は知性がないので、下品なタメ口しか話さない。モラルがないので、男を見れば誰とでも寝てしまう。浪費家なので、男の貯金はすぐに底をつく。家事能力もないので、食事は外食か高級デリバリー。しかも、自分の下着すら片付けられない女です。
ですが、ナオミの肉体的魅力はとびきりで、エリート・サラリーマンであった譲治は、その魅力にあらがえず、どこまでも堕ち続け、人生を翻弄されます。一度は彼女を追い出すものの、すぐに寂しくなり「何でもするからそばにいて」と言い出す始末……。
譲治は「理想の妻」にナオミを育て上げようとしたものの、見事に失敗し、逆に彼女に奴隷のごとく調教されてしまいます!
男は「こいつは悪女だ!」と思っても、その魅力に中々あらがえないものなのでしょうか……。まあ、元々「自分好みの女に育て上げよう」と実行したのは譲治で、ナオミはまさにその通りに、大人になっただけなのですけどね。女をダメにするのは、いつだって男のせいなのかもしれません。