石井桃子の人生は日本のプーに欠かせない
――「日本とプーさん」の展示だけでなく、全ての解説文も石井桃子さん訳で統一されていますね。
ディズニーアニメと原作の翻訳本では、キャラクターの呼び方からして違っています。今回“原作を知ってもらう”というテーマに沿っていくと、日本にこの作品を紹介した石井桃子さんの存在に行きつくので、そこは全て共通するようにしました。
石井桃子さん自身、プーさんの原作だけではなくてミルンの自伝も翻訳されています。しかもそれは石井さんが90歳を超えてから取り組んだ仕事です。
石井さんの人生は、まさに日本にプーさんを連れてきた歴史そのもの。今回の展示には欠かせないものなのです。
石井桃子さんは1933年に「プー横丁にたった家」に出会い、1940年に自身初の翻訳作として「クマのプーさん」を発売。
その後、日本を代表する児童文学者として数々の作品を翻訳しました。
クリストファー・ミルンの自伝「クマのプーさんと魔法の森」も邦訳、さらに90歳を超えてからミルンの自伝「今からでは遅すぎる」を訳し、プーをライフワークとして大切に扱ってきました。
ディズニーも原作を大切にしている
音声ガイド(550円)では、ナレーションを女優の葵わかなさん、そして語りを声優の青森伸さんが務めています。
語りの青森さんはディズニー版プーシリーズの日本語吹き替え版のナレーターです。
おなじみのナレーターの声で原作を読んでもらえる、ぜいたくな音声ガイドです。
――音声ガイドでは青森伸さんが語りを務めていますが、どういった理由で選ばれたのでしょうか?
やはりプーさんに親和性のある声という所ですね。
音声ガイドではプーさんのストーリーの説明なども必要で、そういった朗読部分を素敵に聞かせられる人で、プーさんに親和性のある人は青森さんしかいない、ということになりました。プーさんのことをちゃんと知っていて、声も素晴らしい。
ディズニーのアニメーション自体もすごく原作を大事にして作られています。今回この展示に携わって、ディズニーが原作をとてもリスペクトしているということを、私たちも改めて知りました。アニメーションが原作を変えてしまったわけではなく、やはりアニメーションは原作に対してとても敬意を持っていると気づきました。
そういう意味では、青森さんはアニメに携わっているナレーターの方なので、ぴったりな人選だと思っています。
ウォルト・ディズニーは「クマのプーさん」をアニメーション化するにあたり、なるべく原作のままアニメーションにすることにこだわりました。
ディズニー版のオープニングでは実写で子供部屋を写し、部屋にある「くまのプーさん」の本に入っていくとアニメーションになるという構図で、「くまのプーさん」の本には著者としてA.A.ミルンの名が書かれているなど、原作を非常に重視しています。