例えば、お子さんが幼稚園の徒競走でビリになってしまった、という出来事があったとします。それは、お子さんにとっては、競争で負けてしまったという「体験」となります。
しかし、この「体験」は実は何種類にも解釈できるということを知っていますか?
心理学者のワイナーは、成功・失敗の体験を個人がどのように解釈するのかには大きくわけて、①能力②努力③課題の難易度④運の4つの種類があると説明しています。
例えば、「徒競走で負けた」という体験は、「僕の足が遅いから負けちゃったんだな(能力)」
「僕があまり走る練習をしなかったから負けちゃったんだな(努力)」
「他に足が速い子がいっぱいいたから負けちゃったんだな(課題の難易度)」
「靴ひもがほどけちゃったのは運が悪かったな(運)」
といった具合に解釈できるということです。
ぱっとみただけで、ひとつの「体験」でも何通りもの解釈の仕方、つまり「経験」の作り方があることに気づいていただけたでしょうか。
自信がある人は、失敗体験の原因を【努力】に結びつける傾向が強いことをワイナーは指摘しています。
「もっと努力すれば、勝てたかも」と考えれば、落ち込んだり自信を失ったりすることなく、次回へのモチベーションを高めることができるからです。
逆に、【能力】に結びつけて解釈をしてしまうと「僕は足が遅いから、どうせ頑張っても次も勝てないよ」と自信を失ってしまいかねません。
また、【課題の難易度】や【運】に結びつけてしまうと、「この結果は僕のせいじゃないから、頑張ってもしかたない」と感じてしまうなど、次の挑戦に結びつかないと考えられています。
また、自信がある人のもうひとつの特徴として、成功体験の原因を【能力】と結び付けて考える人が多いことも指摘されています。
なぜなら、成功した原因は自分に能力があるからだと考えることで、文字通りいつでもどこでも「ブレない自信」なり、次回以降も積極的に挑戦ができると見られているためです。
一方で、成功しても「運がよかった」「環境がよかった」と考える人は、なかなか「ブレない自信」を身につけにくいと考えられています。
「体験」をよい「経験」にする方法
実は、ワイナーの研究は、その後様々な角度から再検証が行われており、どういった解釈の仕方が自信につながりやすいかには諸説あります。また私自身の考え方からしても、いつでも失敗は努力不足、成功は能力のおかげといった単一的な考えに子どもを追い込むのは少し抵抗があるかな、と感じています。
ですからどういった角度から「体験」を解釈し「経験」にするか、は時と場合によって親と子どもが一緒に考えればよいのかもしれません。
しかしそれを踏まえてもなお、「体験」は何通りにも解釈ができ、自分の好きな「経験」に変えることができる、というワイナーの考え方の根本は、私にとって大きな気づきでした。
親は子どもがするすべての体験をコントロールすることはできませんし、将来にわたって子どもにとって「よい」体験だけをしてもらう…なんてことは無理があります。
そんなとき、我が子にしてあげられるのは、その「体験」をどう解釈し自分にとって大切な「経験」にするかという考え方を伝えていくことだと思うのです。