昨今では、厳しくしつけるよりも、ほめて伸ばす子育てが主流のようです。ちまたには、タイトルに「ほめる」「ほめ方」とつく本が何冊もあふれています。

ほめることとセットでよく聞かれる言葉に「自己肯定感」があります。

自己肯定感は、能力や所有物に関係なく、ありのままの自分を肯定できる力ですが、日本人は諸外国に比べて低いとされ、特に若年層は、自分を過小評価する傾向が強いというデータもあります。

子どもの自己肯定感を高めるためにはほめることが有効と言われますが、ではどんなほめ方が効果があるのでしょうか。

幼児活動研究会/日本経営教育研究所 所長の八田哲夫さんと、一般財団法人ほめ育財団 代表理事の原邦雄さんがタッグを組んだ『最上のほめ方 自己肯定感を高める4つのステップ』を参考に、ほめる前に知っておきたいことや押さえておきたいほめ方のコツをご紹介します。

子育ての軸を持とう

現代は、さまざまな子育て論に翻弄され、自分の子どもをどう育てたらいいか、わからなくなっているママが多い時代ではないでしょうか。

著者のひとりである八田さんの講演会でよく見受けられる親に多いのが、「うちの子はどうしたらいいですか?」「この子にはなにをやらせればいいですか?」といった質問をし、子育てに明確な答えを求めてくるケースだといいます。

しかし、一人として同じ子どもがいないように、ただ一つの正解など、子育てには存在しません。

八田さんが今まで、講演会に参加して、その後の子育てがうまくいっている人に共通しているのは、子育ての軸、つまり「目的意識」をちゃんと持っていることだそうです。

なぜ子どもを育てるか、どういう子どもになってほしいのか、一度立ち止まって、考えてみましょう。
目的地のない旅はありえないのと同じで、子育ての軸がないままでは、迷いのループから抜け出すことはできません。

子育ての最大の目的は子どもの自立

八田さんは、「自立は子育ての最大の目的」だと言い切っています。

子どもはつねに、あれもこれもできるようになりたい、つまり成長したい生き物です。だから、できもしないのに、「じぶんでやる~!」と言い張ったりするのですよね。

生活力をつけ、社会的に自立するには、他の生き物よりも時間のかかる人間ですから、親もあせることなくじっくりと子どもと伴走してあげたいものです。

そのためには、どういったサポートや声がけが適切なのか、親は知っておく必要があります。後で詳しく述べますが、子どもの自立を阻むのは、時に親であることもあり得るのですから。

ほめて育てれば子どもは自立する

本書に数ある名言のなかでも目を引くのは、「ほめて育てれば、自然と子どもは自立する」という一文です。

生まれたばかりの時は自分ではなにもできなかった子どもが、歩き始め、自我が芽生えてイヤイヤ期と呼ばれる2、3歳の年齢になると、なんでも自分でやりたがって親を困らせるようになります。

子どものやりたいようにやらせたとしても、まだ小さいため、最初からうまくいくとはかぎりませんよね。この時に必要なのが、「大丈夫、あなたならできるよ」と、子どもが自立するために親は待っていてあげられるよという姿勢を伝える声がけです。

反対に、「まだあなたにはムリよ」「なにやってるの!」といった言葉を浴びせてしまうと、子どもの自立のスタートを邪魔するばかりか、成長しても、自分のやりたいことよりも親の意向を優先させる「依存」した子どもになってしまいかねません。

そしてほめる時は、「結果」ではなく「1歩目の瞬間」をほめてあげてください。

ほめ方をまちがうと、やはり依存心の強い子どもになってしまいます。自立の反対は依存ですから、真逆の効果になってしまうということですね。

たとえば、テストの点数や順位など、「結果」ばかりほめると、結果が伴わないことは親にはほめられないと思うようになって、結果的に親の顔色をうかがう子どもになってしまうかもしれないのです。