今年も残すところ3カ月。長く待ちわびたシルバーウィークがあっけなく過ぎ去り、容赦なく移ろう季節に心を置き去りにされている方も多いだろう。
子どものころはいつも私たちに寄り添い、ゆったりと時を刻んでいたはずの時計が駆け足で秒針を進めるようになったのは一体いつからだろうか。

先日、そんな時間の疑問に興味深い答えを提示してくれる本と出会った。
「時間学」研究者の一川誠氏とジャーナリスト・池上彰氏の対談本『大人になると、なぜ1年が短くなるのか』(一川誠、池上彰著/宝島社)だ。

同書を読み進めていくと、「1分間健康チェック」や「10回タッピング診断」など、聞きなれないフレーズが目に止まる。著者曰く、体感時間を知れば、代謝や異性との相性、さらには遅刻癖までもが判明するのだとか。

さすがにそれは眉唾では!? と半信半疑な思いを抱きつつも、筆者はすっかりこの「時間学」に惹きつけられてしまった。

そんなわけで本稿では、同書の著者である千葉大学文学部行動科学科教授の一川誠氏にインタビューを実施。あっという間に過ぎ去ってしまう時間との上手な付き合い方をお聞きした。

「時間学」研究者・一川誠氏

時間と代謝の意外な関係

『大人になると、なぜ1年が短くなるのか』(以下、なぜ1年が短くなるのか)によると、人が体感する時間には「体験したできごとの数」と「時間を気にした回数」、そして「代謝」が関係しているという。

人は体験したできごとが多いほど時間を長く感じる傾向にあるため、初めて体験するできごとが多い子どもは、大人よりも時間の流れをゆっくりと感じるのだそうだ。

▲あなたも、この動画で実感できるだろうか?

一方で、「時間を気にして時計を目にする回数が多くなるほど体感時間も長くなっていく」という説にも、ある程度は頷ける。これは長く退屈な会議に参加したことがある人なら、日ごろから身を以て実感していることだろう。

しかし意外なのは「代謝」だ。一見すると何の関連もなさそうに思える代謝の変動が、我々の体感時間にどんな影響を及ぼすというのだろうか?