一川:時間学の研究では、人は代謝が高いほど時間を長く感じ、低いほど短く感じることが分かっています。
人間のメインとなる体内時計は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分にあり、そこから全身へ信号を出すことで私たちの体は1日のリズムを刻んでいます。この視交叉上核の活動に対応して、全身の代謝も高まったり低下したりします。
感じられる時間の長さを決定する脳内過程も、全身の代謝と対応していて、代謝が高まると早く時間を刻むし、低下するとゆっくり時間を刻むので、実は代謝と体感時間は密接に関わり合っているのです。
1分間で健康チェック! 時間コントロール術
同書では、代謝と体感時間の関係を利用した「1分間健康チェック」という診断方法も紹介されている。
この診断は、時計を見たり心の中で数を数えたりせずに自分の感覚で1分間を測定するという簡単なもので、主観で1分経ったと感じたところで時計を確認し、そのズレをチェックする。
20代成人の場合、この測定の平均値は1分5秒程度となるそうだ。測定結果がこの基準からズレている場合、その人の代謝は落ちていることになるわけだ。
一川:1分間健康チェックを毎日決まった時間に実施するようにすれば、自分の標準値がわかってきます。
仮に測定結果が年代別の平均値からズレていたとしても、自分自身の測定値の平均から大きく変動していなければ問題はありません。代謝は軽く運動をすればすぐに上がるので、測定結果が悪い日は意識的に階段を使うなどするといいでしょう。
心拍で言うと、1分間で10程度上がれば明らかに時間の感じ方にも影響が出てくるはずです。
大事な試験を控えた人は、代謝をチェックした後で少し運動をしてから試験に臨むのも効果的だ。「問題を解き終わらずに試験時間が終わってしまった……」というよくある失敗も、これで解消されるかもしれない。