幼少期に染み込んだ「悪い性質」はなかなか直せない
また、こうも書かれています。
「幼少より染み込むの気随、争(いか)でか容易に直るべけんや。譬えば、初め墨を以って之を染め、今更急に白くせんと欲するが如く、譬えば、栽樹を初め左へ曲げ置き、歳月を歴て右へ曲げんとするが如し、愚かなる事なり。」
【訳】
小さい頃から体に染み込んだ気随(自分の思いのままに振る舞うこと)は、どうして簡単に直すことができよう。それは例えるなら、初めに墨で染めたものを、急に白くしようとするようなもの、左へ曲げておいた植木を、何年も経った後で右に曲げようとするようなもので、愚かなことだ。
ある小学校の先生もおっしゃっていました。
「愛情に飢えた子は愛情を注ぐことでフォローできる。しかし、甘やかされて育った子は後々のリカバリがきかない。」
現代の子育てでは、「子どもの好きなことに関しては思いきり、自由にやらせた方がよい」と言われます。子どもの能力を伸ばす“良いわがまま”と、子どもをダメ人間にする“悪いわがまま”の適切な線引き、ぶれない判断軸がポイントなのでしょう。
大人としては、子どもの明らかな“悪いわがまま”に接したとき、放置せず、「なぜいけないのか?」という理由を根気よく伝え続ける姿勢が最も大事なのかもしれません。
まずは親が正しく生き、誠実に向き合うこと
最後に、こんな“ごもっとも”な心得も。
「子を育て教ゆるには、親の身持ち正しくするこそ専一なれ。似我蜂(じがばち)は外の虫を取り来たりて、『我に似よ、我に似よ』というてこれを育つるに、親の形に違わず、必ずはちになるなり。心なき虫すら斯くの如し。況(まして)や人の子をや。
親正しきときは、自ずから正しきに似る事易かるべし。
心に誠に之を求めば、中(あた)らずと雖も遠からず。」
【訳】
子どもを育て教えるには、親の品行を正しくすることが何よりだ。ジガバチ※(ハチの一種)が他の虫を取ってきて、「我に似よ、我に似よ」といって育てると、必ず親のような蜂になる。心のない虫ですらそうなのだ。ましてや、人の子がそうならないことがあろうか。
親が正しければ、子どもも自然と親の正しいところに似てくる。
誠の心で求めれば、たとえ的に命中しないとしても、見当違いにはならない。
つまり、「親が正しく生きて誠実に向き合えば、子は悪いようには育たぬ」ということでしょうか。
先人からのアドバイス、しかと心に受け止めたいですね。
ジガバチの名は、その羽音に由来し、虫をつかまえて穴に埋め、似我似我(じがじが、我に似よ)と言っているとの伝承に基づく。じがじがと唱えたあと、埋めた虫が後日ハチの姿になって出てきたように見えたためである。(出典:Wikipedia)
<参考>
『江戸の子育て十カ条 善悪は四歳から教えなさい』小泉吉永/柏書房