2020年に東京オリンピックを控え、街中で外国人を見かけることが多くなってきました。英語を使う機会も増えそうですね。

英語といえば、さらに、2020年には教育面で大きな改革が起こります。

2018年からすでに小学生が授業で英語に触れる時間は増えてきていますが、それが本格的に変わるのが2020年。小学3年生から英語活動が、5年生からは教科として、いわゆる「成績がつく英語」が導入されるのです。

これからは英語ができない子は生き残れないのではないかと、ますます焦りを感じているパパママも多いのではないでしょうか。

ですが、実際に子どもたちが受けている英語教育で、本当に英語がしゃべれるようになるかどうかは疑問です。必ずしも適切な人材が教えているとは限らない場合もあるからです。

また、英語教育は子どもの年齢が早ければ早いほど本当に効果があるのでしょうか。保護者の不安はつきません。

長年英語教育に携わってきた鳥飼玖美子さんの新刊『子どもの英語にどう向き合うか』は、現代の英語教育の問題点や、早期教育のよしあしについて、考えるきっかけになると思います。

もしかしたら、子どもが英語を学ぶにあたって、英語よりも大事なことがあるかもしれませんよ。

幼児教育は意味がない?

突然ですが、あなたは英語教育を低年齢から受けさせることに、確かな効果があると思いますか?

本書によると、幼児期・児童期に英会話塾に通ったことがある、もしくは帰国子女のグループと、幼児期・児童期に英語を習ったことのないグループに、中学1年生の終わり頃に、英語の学力テストを受けさせた結果、2つのグループにはまったく差がなかったそうです。

英語塾に通おうが、幼少期を海外で過ごそうが、中学まで英語を習ったことがなかろうが、成績がよかった子どもに共通するのは、自宅での学習習慣があるかどうかでした。もちろん、それは英語にかぎらず、どの教科でも同じです。

鳥飼さんに言わせると、この調査結果はしごく当然なことだそう。

その理由として、私立の小中一貫校では、小学校で英語を勉強せず中学から入試を受けて入ってきた生徒と、小学校から英語を習ってきた生徒の差が一年もたたないうちになくなってしまうという例をあげています。

中学入試を受けてきた子どもは、すでに学習習慣がしっかりとついているからなのでしょうね。

発音よりも内容が大事

それでも、早く英語に慣れれば、正しい発音が身につくのではないか、という意見はいまだに根強くあります。確かに発音は小さいほど容易に身につくと、鳥飼さんも書いていますが、そもそも発音はそんなに重要なのでしょうか。

「国際共通語という視点から見ると、英語母語話者のような発音はそれほど重要な要素ではありません。これからは、なにを話すか、話す内容が問われます」

確かにその通りで、英語を流ちょうに話している人を見ると、すご~いとなりがちですが、その内容まで注意して聞く人は少ないですよね。

鳥飼さんによると、帰国子女でネイティブ並みの発音で英語を話す青年が、面接で抽象的なことを聞かれしどろもどろになる、といった例もあるのだとか。

バイリンガル研究で知られるカミンズは、言語力を「会話力」と「学習言語力」に分けています。

いわゆる日常会話は、子どもの年齢が低いほどすぐに使えるようになりますが、学校の勉強に必要な学習言語は、ネイティブの子どもと同レベルになるのに倍以上の年月がかかるのだそうです。

また、外国に移住した年齢によっても、学習言語力を獲得するまでにかかる時間に差が出ます。

もっとも容易に、そしてもっとも早く身につけることができるのは、母語の読み書き能力がついている7~9歳の子どもなのだそうです。

移住年齢がそれ以下だと、学習言語力がつくまでに、最大で3倍以上の時間がかかる場合もあるそうですから驚きですね。