読み書きを軽視してはいけない

一般的に、「日本人が英語を話せないのは、英語教育が読み書き・文法に偏っているからだ」という批判がありますが、実際には1989年から、学校英語教育は「会話」中心へと方向転換しており、「オーラル・コミュニケーション」に大きく時間を割いています。

つまり、30年前から、とっくに読み書き・文法よりも、話す・聞くにシフトした教育に移行しているということ。それなのに、英語を話せる人がまだまだ少なく、話せる人がもてはやされる傾向は続いています。

本書では、鎖国時代のオランダ通詞が、どうやって英語を習得したかについても、かなりのページにわたって書かれています。

英語を話したり聞いたりする機会など滅多にない彼らが英語を話せるようになった背景には、読み書きの学習でつけた基礎力があったからということです。

「英語は日本語とは言語体系がまったく異なる言語であるから、それを習得するためには読み書きの学習をすることが不可欠」と鳥飼さんは言っています。

幼児期に英語よりも必要なこととは?

そして、読み書き以前に、子どもにとって大切なことがあります。それは、母語の獲得です。

生後16〜20ヶ月は、子どもが言葉を獲得する上で、「語彙爆発」と呼ばれる重要な時期なのだそうです。

この時期以降、周囲の大人や、きょうだい、友達とのやりとりを通して、語彙はどんどん増えます。平均的な6歳の子どもでは、1日に約22個の新しい言葉を学ぶとも言われています!

読み聞かせや言葉遊びなど、コミュニケーションを通して、子どもは言葉を獲得してきいきます。発達心理学の観点からみても、幼児期・児童期は母語を全身で貪欲に吸収する時期なのです。

そして、この時期に培った母語の力が土台となって、やがて外国語を学ぶ際の足がかりとなるのです。

英語はまずは遊びから

小学校ではまず英語という異言語に出会い、興味を持たせることを第一に考えればいいのではないでしょうか。

子どもは遊びから学びます。というより、子どもの遊びは学びそのものなのです。

ある調査で5歳児の語彙力の測定をしたところ、語彙力が高かったのは、一斉保育ではなく、自由保育で育てられた子どもたちだったといいます。

決められた時間割でしっかりお勉強させる一斉保育よりも、好きなように遊ばせる自由保育の子どもの方が語彙力は豊かで、さらに、年齢が上がるほどその差は開いていくというのです。

このことは、家庭内での過ごし方にも応用できそうです。

つい親は、よかれと思って先回りしたり、言うことを聞かせようとしてしまいますが、親子のふれあいを大切に、子どもと楽しい経験を共有することを優先させる方が、結果的に子どもの能力を伸ばすということなのではないでしょうか。

焦って英語を習わせて、英語ギライにさせては、元も子もありません。

いざ、本当に子どもが英語を習得する気になったとき、子どもが全力を出せるよう、親はさりげなくサポートしていきたいものですね。