『Go! プリンセスプリキュア』の『Miracle Go! プリンセスプリキュア』

続いては、プリキュアシリーズ最新作『Go! プリンセスプリキュア』より、オープニング主題歌の『Miracle Go! プリンセスプリキュア』を。

テクノポップやEDM、ファンキーなソウルなどなど、様々な音楽要素を取り込み、"攻めた"曲も多いプリキュアシリーズの主題歌ですが、『Go! プリンセスプリキュア』のテーマ曲もやっぱり凄かった!

この『Miracle Go! プリンセスプリキュア』は、エレクトリックドラムの音が小気味よい、アップテンポなポップチューンなのですが、とんでもない変化球が使われています。

何と曲の途中で大胆なリズムチェンジが行われ、ワルツのような三拍子のリズムになるのです。

主人公がプリンセスを目指し、変身アイテムでドレスアップしながら戦う『Go! プリンセスプリキュア』のイメージに合わせて、エレガントなワルツのリズムが取り入れられていると思うのですが、それにしたってこの大胆な展開はインパクト大。

更に、三拍子のリズムを織り込む手法は、エンディング曲でも使用されており、『Go! プリンセスプリキュア』という作品における"プリンセス"というモチーフのイメージを決定付けています。

最近のアニソンだと、『まじもじるるも』の主題歌になっていた三森すずこさんの『せいいっぱい、つたえたい!』でも同じく曲の途中で三拍子が入っていましたよね。やっぱり、ワルツのリズムって、優雅さやファンタジックな雰囲気を演出するのにピッタリなのでしょう。

もはや、"プログレ"と表現しても差し支えない程の急激なリズムチェンジすら取り込んだプリキュアの主題歌。シリーズを重ねる毎に進化と深化をみせる同シリーズの音楽から、今後も目が離せません。

『放課後のプレアデス』の『Stella-rium』

GAINAXとスバルのコラボによる『放課後のプレアデス』は、惑星や宇宙を舞台とした変身魔法少女アニメ。

SFライクなファンタジー、或いは、ファンタジックなSFといった趣の作風で、そこに主人公である少女たちのセンシティヴな感性が絡まり物語が紡がれていく、非常にドラマティックなアニメでした。

サイエンス・フィクションではあるのだけれどファンタジー、スペースオペラなれど魔法少女もの。絶妙なバランス感覚で展開される壮大なストーリーがアニメファンを魅了した作品です。

音楽面も充実しており、オープニング、エンディング共に主題歌がとにかく素晴らしかったのも本作のチャームポイント。

エンディングの『ここから、かなたから』と、どちらをベストに選択しようか迷ったのですが、今回はオープニング曲の『Stella-rium』をご紹介させていただきます。

昨今、色々な音楽的趣向を凝らした楽曲が生み出されているアニソンシーンですが、この曲は潔いまでにストレートなバンドサウンドによるアニソンです。

Aメロの音数を抑え、ほぼリズム楽器を使わずギターのみで進行するストイックな構成から徐々に盛り上がっていき、高揚感に溢れたサビへと繋げるメリハリの効いた構成が聴きどころとなっており、曲全体のエモーションがより一層際立つ楽曲となっています。

シンプルなバンドサウンドながらも、アニメ本編の壮大なスケール感と疾走感が見事に表現された優れた一曲。楽曲構成とメロディの強さを、音楽好きな方にも是非とも体験していただきたいナンバーです!

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の『打ち寄せられた忘却の残響に』

あらゆる音楽ジャンルを取り込み、冒険作、意欲作が数多く作られているアニソンの世界。この『打ち寄せられた忘却の残響に』も、そうしたミクスチャー的な音作りの結果、非常にユニークな音楽性を有した楽曲が誕生したという奇跡的かつ刺激的なナンバーです。

この曲は、本格的なエレクトロニカ・サウンドを取り込んだアニメソング。同じ電子音楽でも、テクノポップやEDM調のアニソンは数多くありますが、エレクトロニカなアニソンは今までに有りそう実は無かった新機軸だといえます。

"チチチチチッ……"というエレクトロニカ特有のアンビエントな電子音や幽玄的なストリングスの音によって生み出されるサウンドは、Sigur RosやMUMといったアイスランド系の電子音楽を連想させる非常にエモーショナルな仕上がりに。

そこに、ヴォーカルを務める大竹佑季さんのアダルティな歌声が絶妙に相乗効果を発揮し、儚げで美しい"エレクトロニカアニソン"を生み出しています。

ビートの効いた電子音やヘヴィでメタリックなサウンドが使用されることの多いアニソンにおいて、低音が曖昧模糊とした存在であるエレクトロニカを基盤に楽曲を作るというチャレンジ精神に溢れた一曲であり、同時に、アニソンの多様性を雄弁に物語る楽曲です!

グロテスクでショッキングなシーンもありつつ、ヒューマニズムに溢れたドラマを織り成す『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』というアニメの作品性や、ヒロインである九条櫻子さんのミステリアスなキャラクターにも非常に合っていましたし、異色作でありながら見事な"アニソン"だと思います。