幼児期の“読み聞かせ”が持つ効果
――本の読み聞かせは有効でしょうか。
藤原さん:年齢によっても異なりますが、幼児の時の読み聞かせはとても効果があると思います。私は幼児期から小学校低学年まで、毎晩母に児童文学全集を読んでもらっていました。その記憶は“母の音”、“波動”として私の中に入っています。
同じ物語を何度も何度も読んでも子どもは気にならない。むしろ気に入ったストーリーを繰り返し読みたがる。大人にとって意味があるとかないとかではなく、その物語が大好きで、自分を物語の中に投入する傾向があります。
読み聞かせによって読書好きになるとは言えませんが、幼児期の読み聞かせは、これ以上ない道徳教育として有効だと思います。
子どもが夢中になる! 藤原さんおすすめ絵本5
「私も自分の3人の子どもたちに、のべ10年間、200冊以上の本を読み聞かせをしてきました。」という藤原さん。
最後に、藤原さんの3人の子どもたちが繰り返し読んだという、とっておきの5冊を教えてもらいました。
「10年間、子どもたちが飽きずに聞いてきたという実験済みの本」というお墨付きの素晴らしい本ばかりです。
・『ぐりとぐら』
名作『ぐりとぐら』のシリーズ。のねずみの“ぐり”と“ぐら”が、大きなカステラを作ったり、ごちそうを食べたりするおいしそうな場面も印象的。リズム感のある独特の言葉まわしも人気の秘密です。
・『ろけっとござる』(『ひとまねござる』シリーズ)
日本ではアニメ『おさるのジョージ』で知られる、こざるの“ジョージ”の物語。
「300回は読み聞かせした本です。子どもたちはジョージに自分を投影して、いたずらしたくてしょうがない気持ちを託ししていたようです。」
・『バーバパパのいえさがし』
人間に住む家を追われたバーバパパ家族が、新しい家を探す物語。人間の都合で家を壊されるバーバパパたちともに憤慨し、応援したくなる子どもたちも多いようです。
・『ずーっと ずっと だいすきだよ』
小学校1年生の国語の教科書にも採用されている話。ずっと一緒に過ごしてきた老犬の死が、少年の視点で語られる。「この表紙を見ただけで涙がでてしまいます」と藤原さん。
・『おしいれのぼうけん』
保育園でいたずらをした二人が、先生に押し入れに入れられ、そこで大冒険をするというストーリー。暗闇の中でのドキドキ感で、子どもの想像力がふくらむ名作です。
これらのすばらしい物語に自分を投入してイマジネーションを豊かにする、そのもっとも効果的な方法は、絵本の読み聞かせだと話す藤原さん。
「バーバパパなど、気に入った絵本を、子どもたちはぬりえとしても遊んでいました。同じ本を2冊買って、1冊は読み聞かせ用、もう1冊は何をしてもオーケーの本と使い分けてもよいかもしれません」。
【藤原和博】 教育改革実践家。東京都初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。元リクルート社フェロー。メディアファクトリーの創業も手がける。 2014年より佐賀県武雄市特別顧問。2016年4月より、奈良市立一条高校の校長に就任。
・『本を読む人だけが手にするもの』日本実業出版社 (2015/9/30)