養育者と愛着を形成できなかったらどうなる?

さて、それでは、赤ちゃんが「愛着」を育てられなかった場合、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。

すでにご紹介したとおり、赤ちゃんは親との距離が離れたときや怖いと思った時に親に近づくことで「安心」を得ようとする「愛着」を育みます。通常は生後2年~3年の間に「愛着」が芽生え、愛着関係を繰り返すことで、人に対する安心感を獲得していきます。

もし、この「愛着」を育てられなかった場合、子ども時代や大人になってからも「生きづらさ」を感じてしまう可能性が高くなるといいます。

コトバンクによると、愛着がうまく育たなかった(愛着障害)の子どもには衝動的・過敏行動的・反抗的・破壊的な行動がみられ、情愛・表現能力・自尊心・相手に対する尊敬心・責任感などが欠如している場合が多いといわれています。他人とうまく関わることができず、特定の人との親密な人間関係が結べなかったり、見知らぬ人にもべたべたするといった傾向もあります。

愛着がうまく育たないと「人との距離感」を取るのが難しい、「コミュニケーション」を上手に取ることができない、衝動的な行動を取ってしまう、という問題が現れることもあるとのこと。

適切な環境で継続的に養育することで大幅な改善が期待できるとのことですが、誰かを信頼し、安心して育ち、人間関係をつくっていくためには、やはり赤ちゃんの頃から「愛着」を育てていくことが、とても重要になります。

3歳未満の子どもが施設で暮らすのを「法律で禁止」している国も

国連のガイドラインでは「乳幼児、特に3歳未満の子どもの代替養育は、家庭を基盤とした環境で提供されなければならない」と書かれており、多くの先進国では乳幼児が施設で育つことはありません。

チャウシェスクの時代に、多くの子どもがひどい状態で施設に暮らしていたルーマニアでも、現在では3歳未満の子どもが施設で暮らすことは法律で禁止されているのだそうです。

このように海外で、「3歳未満の子どもたちが施設で過ごさないようにする」ということは、何らかの理由で産みの親が養育できない場合でも、施設の代わりに他の養育者が子どもの育てる、里親や養子縁組の仕組みがしっかりしているといえるかもしれません。

また、愛着理論、早期母子関係理論などを提唱したイギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが1951年に発表した「母親による世話と幼児の心的な健康の関連性について」という論文によると、新生児が自分の最も親しい人を奪われ、また新しい環境に移され、その環境が不十分で不安定な場合に起きる発達の遅れや病気に対する抵抗力や免疫の低下、精神的な問題(「母性的養育の剥奪」)が指摘されています。

さて、では、日本ではどうなのでしょうか。