「一番大事なのは、“個人の幸せ”。アムールなしで悪い関係になって、我慢するのはよくない。我慢するよりは離婚した方がいい、というのがフランス人の考え方。2人の幸せが家族の幸せ。個人が幸せだったら子どもも幸せ。……フランスではメインが“カップル”だから、家族のコンセプトがちょっと違うんですね。

フランスでは離婚する人が多くなっているけど、子どもとの関係はずっと大事にします。
日本では、お母さんが、(別れた)お父さんに子どもを合わせないという事がたまにありますが、これはフランスでは絶対ダメ。刑務所まで送られるほど厳しく決められています。
子どもの権利(離婚した両親が均等に子どもの面倒を見るよう裁判所で決められる)は法律で決まっているし、両親はそれなりの努力をしなければならない。簡単ではありません。大変! (笑)」

「たとえば、子どもは、休みのときや週末だけお父さんのところへ行くとか、1週間はママのところ、1週間はパパのところへ行くとか。そこに(両親の)新しいガールフレンド・ボーイフレンドがいて、子どもがいたりすると、また新しい家族の形態ができる。
人生は長いから、ずっと我慢して、子どもも嬉しくないし寂しい……という状況を続けるよりも、ちょっと大変でも、自分の幸せをメインにするのがフランス人です」

生き方の選択肢が多彩で、家族の形もいろいろ。考え方が柔軟なんですね。

仕事も子育ても、人生のひとつで、メインじゃない

日本では今も、“子育ては母親がすべきもの”という暗黙のプレッシャーがあります。フランスはどうなのでしょうか?

「フランスでは、子どもを産んだ後、必ず仕事に戻ります。これは日本との大きな違いだと思います。仕事をしたり、子どもを産んで母親になったりすることは、自分の人生の中のひとつで、メインじゃない。全部の中、女性であることの中のひとつなんです。」

「フランスでは、子どもを預けることは悪いことではありません。夫婦で出かけるときや遊びたいときなどに、0歳から子どもをベビーシッターや保育園に預けるのは、当たり前の事。お互いの時間のために、子どもは小さいときから自分のベッドルームを持っています。赤ちゃんのときから両親と一緒には寝ないようにしている家庭が多い。
もちろん、子どもは大事にします。だけど、子どもがいても、アムールも大事だから。両親の役割と夫婦の関係は、まったく別なんです。
妻になっても母になっても、『女』であることがいちばん大事。『女』の意味には、『人間』という意味もあります」

フランス社会はまた、著名人のプライベートに関して寛容です。
大統領の不倫沙汰は日常茶飯事。話題にはなっても、辞任騒動や不祥事的扱いにはなりません。

「一番大事なのは、うまく仕事をするかどうか。いい悪いは別にして、プライベートはプライベート。プライベート=自分の幸せなので、仕事やパブリックな世界とは違うのです。プライベートについてのストレスとか、プレッシャーとか、日本は少しへん(笑)。もうちょっとリラックスして、自然でもいいのでは?」

自分の幸せを追求し、さらに他人の幸せや生き方も尊重する。ドラさんいわく、それも「フランスのおもしろいところ」。