依然として低い水準が続く、日本の出生率。そんな中、ここ数年、ベビーブームに沸いているのがフランスです。
しかし同時にフランスでは、結婚しないカップルも増えているといいます。

その不思議な現象の背景を、『フランス人は「ママより女」』(小学館文庫)の著者であるフランス人ジャーナリスト、ドラ・トーザン(Dora Tauzin)さんに伺いました。

ドラ・トーザン(Dora Tauzin)さん
【プロフィール】ドラ・トーザン(Dora Tauzin)
エッセイスト・国際ジャーナリスト。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。 現在、日本とフランスの架け橋として、新聞、雑誌への執筆や講演、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多方面で活躍中。『フランス人は年をとるほど美しい』(大和書房)など著書多数。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。[Facebook]

フランス、愛のパラドックスから生まれた「パクス」制度って?

子どもを産む人が増えているのに、結婚しない人も増えている。矛盾しているように思えます。

「それがパラドックス。フランスでは1970年代から、結婚する夫婦の数が減っています。反対に、同棲や事実婚など、一緒に住むカップルの数が増え、離婚するカップルも増えた。これは結婚に興味がないカップルが多くなっているという事。最近では、結婚に興味があるのはゲイ(同性愛)のカップルで、ヘテロ(異性)カップルはさほど興味がない。おもしろいパラドックスです」

同棲や事実婚が多くなると、生まれた子どもの権利や税金、相続など、いろいろ法律的な問題も出てきます。そこで1999年、フランスに登場したのが、「パクス」と呼ばれる新しいカップルの契約制度。

「パクス」は、結婚と同棲の中間のようなカップルの形態で、結婚まではいかずとも、それに準じる社会保障が受けられるなどのメリットがあります。ドラさんによれば、フランスのおもしろいところは、この「パクス」制度に見られるように、社会変化があると、それに法律を早く合わせるところだといいます。

「だんだん婚外子の数が増え、その割合が60%にもなったのです。それで、しょうがないから法律を変えた。結婚している夫婦としていない夫婦とでは、子どもの権利に違いがありましたが、今は、両親が結婚していても、していなくても、子どもの権利はまったく同じです。

結婚してもいいし、しなくてもいい。でもフランス人にとって、恋愛やアムール(愛)は大事だから、一緒に住みたい。一緒に住むから、子どもを産みたいと思うのが自然。私の周りでは、結婚していない夫婦の方が長くもっていて、結婚している人の方が、早く離婚します。おもしろいパラドックスです。どうしてかはわからないけど(笑)。子どもを産んだ後、何年か経ってから結婚する人も多いです」

“アムール”がなくなったら、我慢より離婚

フランス人は、子どもを産んでからも、パートナーとの“アムール”を大切にします。そのため“アムール”がなくなると、一緒に暮らす意味が薄れます。パリでは実に、結婚したカップルの半数近くが離婚するとか。

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