ほめて育てたいけど、子どもが全然言うことを聞かないから結局怒ってばかり。コミュニケーション能力の高い子になってほしいけど、そのために親がどんな声かけをしたらいいかわからない。
そんなふうに、育児において子どもとのコミュニケーションに悩む親は多いと思います。子どものためを思うからこそ、悩みは尽きないものですよね。
そんなとき、子どもと接するプロである保育士さんの声かけは参考になるのではないでしょうか?
なんと、栃木県足利市には、92歳の大ベテラン現役保育士さんがいるんですよ。
4、5歳とは思えないくらい子どもが自立する「奇跡の保育園」と言われる「小俣幼児生活団」で、現在まで60年かけて2800人以上の園児たちと関わった大川繁子さんは、モンテッソーリ教育やアドラー心理学を取り入れた保育を実践し、92歳になる現在も主任保育士として園に勤務しています。
そんな大川さんの著書『92歳の現役保育士が伝えたい親子で幸せになる子育て』より、親がやってはいけないNGコミュニケーションをご紹介します。日々子どもの声かけに悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。
1:上から目線で命令する
「お片付けして!」
「ごはんを食べて!」
「早く準備して!」
子どもに何かしてほしいとき、このようについ命令してしまっていないでしょうか。
大川さんは、「子どもは対等な存在」だと言います。大人相手にしないことは、子どもにもしないのが小俣幼児生活団のやり方。
何か行動を起こしてほしいときは、「~して」という命令形ではなく、「~してくれませんか?」「~してくれるとうれしいのだけど」とお願いするのだそう。
そして、するかしないかは子ども自身が決める。考えた結果、「しない」と決めても良いのです。
なんと小俣幼児生活団では、お当番もないのだとか。何か“お仕事”が発生したときは、保育士が「だれか手伝ってくれませんか?」と聞けば必ずだれかが元気に手を挙げてくれるのだといいます。もちろん、気が向かない子はお手伝いしませんが、それは子どもの自由なのですね。
命令して、押し付けて、言うことを聞かなかったら怒る。大人同士だったら、理不尽だと感じます。
子どももひとりの人間として、大人に接するように接してみましょう。決して、命令口調で無理やり何かさせようとは思わないはずです。
2:「いい子」「すごいね」と評価する
「叱らない子育て」や「ほめて伸ばす育児」などが注目され、とにかくなんでもほめていますという方も多いのでは。
ですが、大川さんは「子どもに対して評価の言葉は使わず、自分の気持ちを軸に接する」と言います。
ほめるというのは、上の人間が下の人間を判定する言葉。そこには上下関係があり、対等ではないのです。
たとえば友だちにおもちゃを譲ってあげた子に対して、大川さんは「友だちに優しくできたね。先生、とってもうれしいよ」と声かけします。「えらい!」「すごい!」という“評価”をしないのです。
ほめられたら子どももうれしそうだし、決して悪いことではないのですが、そこには大きな落とし穴があるのだそう。
ほめられてうれしく思った子どもは、ほめられることを行動の目的にしてしまうのです。いずれ自分がやりたいことより、周囲からほめられることを優先するようになる可能性もあります。他人の評価ばかり気にする人生は不自由ですよね。
アドラー心理学では、「自分はみんなが参加する社会の一員である」という意識を持ち、その中で自分が何ができるかを考えることを目指すそうです。
ほめるのではなく、「~してくれたらうれしい」「~してくれたから、うれしかった」と感謝を軸にこちらの気持ちを伝えることで、子どもが「人に喜んでもらえるとうれしいな、そのために自分に何ができるかな」と自分で考えて動ける子になってくれたら、こちらもうれしいですよね。