まだまだ巡業中の舞台なので、ネタバレを避けるために、本レポートではキャストの演技、見どころシーンにフォーカスして述べさせていただく。
まず、主人公・苗木誠を演じた、本舞台の座長でもある本郷奏多。初演から全公演に出演しており、アニメ『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』では声優を務めている。
彼自身「ダンガンロンパシリーズの大ファン」だと公言していることからも、物語世界への理解はキャスト内No.1と言っても過言ではないだろう。学級裁判時の迫力のある発声には、思わず客席側もドキッとしてしまう。演技だとわかっていても、犯人役はさぞかし心臓に悪かろう……。
また、苗木の持つ強い意志が物語をぐんぐんと進めているのを見ると、霧切響子が言った「あなたはただの幸運で希望ヶ峰学園に入学してきたのではない」という意味が理解できる気がする。
霧切響子役の岡本玲も初演からのキャストだが、彼女が演じたのは抑えた感情や隠された設定、ミステリアスな表情……隠された設定が多く観客側からも感情移入がしにくい、難しいキャラクター。それを演じ切った彼女の名演に、モデルからキャリアを開始し映画・舞台女優として開花した25歳の凄みを見た気がする。
モデル出身というキャリアでいえば、今回のキャストの中には元モデルでアイドル出身の七木奏音もいる。劇中には“超高校級の文学少女”腐川冬子が変貌するシーンもあるのだが、演じた七木の存在感は10代とは思えない堂々たるものだった。
失礼ながら七木の演技を観るのは今回が初めてだったが、いろんな意味でトリッキーな腐川のキャラクターを掴みきり、しっかり自身に引きつけて演じていたので、安心して観ていられた。